いわくつきの公衆電話
「その公衆電話には、夜中に真っ赤なワンピース姿の女性が現れる。女性は真っ赤な涙を流しながら微笑み、目が合った者は呪い殺される……」
私の地元には、そんな噂のある公衆電話がありました。
これは、私が小学生の頃の話。
自宅から小学校までの通学路に、その公衆電話はありました。
当時はまだ、今ほど携帯電話が普及していない時代。公衆電話は至る所にあり、使用する人も多くいました。
しかし、そんな噂があるせいか、その公衆電話を使用している人はあまり多くいません。
通学中に通りかかるときもなんとなく気味が悪かったので、距離を取っていました。
友人の誘い
ある日、友人が言いました。
「今日の夜中、あの公衆電話を見に行ってみない?」
もちろん私は、そんな恐ろしいことなんてわざわざしたくはありません。
しかし、その場にいた友人たちが次々に賛成するものだから「怖い」などと言い出せず……。
その日の夜、あの公衆電話の近くで待ち合わせをすることに。
現れた女性の姿
家族が寝静まったのを見計らい、こっそりと家を抜け出しました。
待ち合わせをしている公衆電話の近くまでたどり着くも、まだ誰も来ていないようです。
「怖がってる」と思われたくなかった私は、少々早めに駆け付けたのですが、それにしても早く来すぎてしまいました。
さすがに公衆電話の近くで待つのは怖かったため、少し離れたところからみんなが来るのを待つことに。
すると……、公衆電話に女性が近付いてきました。
私は一瞬、あの幽霊が現れたのだと思い、心臓が跳ね上がりました。
しかし、その女性の服は真っ白なワンピース。噂の幽霊は真っ赤なワンピースに、血の涙を流しているといいます。
恐らく、普通に公衆電話を使用しにきた人なのでしょう。
「え、でもなんでこんな夜中に?」そう思ったのも束の間……
「っ……!?」
女性が公衆電話の中に入ると突然、電話ボックス内に大量の血飛沫が飛び散りました。
なにが起きたのか、なんの血なのか。全くわけがわかりませんでしたが、ボックスの透明な壁は真っ赤な血で染まり、こちらからは中の様子がよく見えません。
しかし、血の間から一瞬見えた女性の姿に、私は悲鳴を上げました。
「っひ、ひい……っ!?」
真っ白だったワンピースは大量の血で染まり、真っ赤なワンピースになっていたのです。
今でも鮮明に浮かぶ光景
女性は、ぎこちなくこちらに首を回してきました。
瞬時に「まずい!」と思った私は、そのまま家まで全速力で帰ったのです。
翌日、友人たちには「なぜ来なかったんだ」と散々にからかわれ、昨日見た光景をしどろもどろに説明するも、全く信じてもらえませんでした。
友人たちは、あのあと時間ぴったりにあの場で落ち合ったのでしょう。
あの公衆電話に集まって中に入ったり、幽霊が来るのを待ってみたりと、しばらくその場で過ごしたようでしたが、なにも恐ろしいことは起こらなかったといいます。
あのとき女性がこちらに振り返り、もし目が合ってしまっていたら、真っ赤な血で染まる微笑みで呪い殺されていたのでしょうか。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆松木あや
ホラーやオカルトが好き。在住する東北の地で、ひんやりとした怖い話を収集しています。
恐怖体験の「おすそわけ」を楽しんでもらえると嬉しいです。
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