古い神社
当時、神社巡りにハマっていた私。知らない土地を訪れては、新たな神社を見つけるのが休日の楽しみに。
その日も、また見知らぬ神社を訪れていました。
恐らく古くからある神社なのでしょう。その神秘的な雰囲気に息を飲み、ひと気のない神社の空気を堪能していました。
そして、周りを眺めながら参道を歩いていたときのことです。
“ザッ、ザッ、ザッ”
すぐ後ろで、突然足音が聞こえたのです。
周りの風景に集中していたとはいえ、こんなに近くに来るまでその足音に全く気が付きませんでした。
そのことに驚き、すぐに後ろを振り返るも……そこには誰の姿もありません。
ついてくる足音
「聞き間違いだったのか」と首を傾げます。
そうしてまた神社を見渡し、その景色を眺めていると……
“ザッ、ザッ、ザッ”
またしても突然、後ろで足音がするのです。
驚いてすぐに後ろを振り返りますが、先ほどと変わらず人の姿はありません。
気味が悪くなった私は、神社を後にしようと踵を返しますが……
“ザッ、ザッ、ザッ”
“ザッ、ザッ、ザッ”
今度は四方八方から足音が。
しかし、どこにも人の姿などないのです。
「この神社、おかしい」そう感じた私は今歩いてきた参道を振り返り、全速力で引き返しました。
走っている間も、足音が鳴りやむことはありません。
もう少し
もう少しで参道を抜け、あとは鳥居をくぐれば神社の外、そう安堵したとき。
「っ……!」
今まで感じたことのないような悪寒が全身を駆け抜けました。
「早く鳥居の外に出なくては」直感的にそう感じるも、得体のしれないその感覚は私の足を地面から離しません。
“ザッ、ザッ……”
無数の足音はやがて、私の真後ろで動きを止めました。
そして……
「っう、うっ……うわああぁっ!?」
見えないたくさんの“何者か”に、私の体は羽交い絞めにされました。
その正体
それは物凄い力でしたが、必死にもがき振り払い、私はなんとか鳥居の外へ。
すると、全身が一気に軽くなったのです。
そうして早鐘を打つ心臓を抑えながら、先ほどまでもがいていた場所を恐る恐る振り返ると……
「っ……ひっ!」
そこには、人の形をしたモヤのようなものが、無数に浮いていました。
そのモヤには薄っすらと顔のようなものが浮かんでいましたが、まるで能面を貼り付けたようなその表情は、背筋が凍り付くほどに不気味なもの。
すぐにその場から走り去ったため、その後モヤがどうなったのかはわかりませんが、あの神社はなにか悪いものが渦巻く場所だったのでしょうか。
以降、好きだった神社巡りはパッタリとやめてしまいました。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆松木あや
ホラーやオカルトが好き。在住する東北の地で、ひんやりとした怖い話を収集しています。
恐怖体験の「おすそわけ」を楽しんでもらえると嬉しいです。
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