【ゾッとする怖い話】「あと一歩だったのに」廃トンネルで手招く“女”。戦慄した肝試し

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「行ってはいけないトンネル」――
その噂は、ただの冗談だと思っていた。
しかし、あの夜を境に、私はどんなトンネルも通れなくなってしまった。

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深夜の廃トンネル

トンネル出典:stock.adobe.com

大学のゼミ仲間で行った肝試し。
地元で“出る”と噂される廃トンネルに向かったのは、深夜0時をまわった頃だった。

地図にも載っていない旧道の奥。
木々に埋もれるようにぽっかりと口を開けたそのトンネルは、思った以上に湿っていて、冷たく、淀んだ空気が漂っていた。

「5分で戻ってこいよ」
「足元、ちゃんと照らせよ」

背中越しに飛んでくる声に手を振り、私はスマホのライトを頼りに、ひとりで中へと進む。
中は、しんと静まり返っている。

壁に広がる苔、天井から落ちる水滴、どこか重たくよどんだ空気……。
すべてが、時の止まったような匂いを放っていた。

響く足音と、ひんやりした指

進むにつれて、足元の砂利がやけに大きな音を立てているように感じた。
頼れるのは手元のライトだけ。

周囲はすべて闇に包まれていた。
このトンネルは、短いはずだった。

数分も歩けば向こう側の出口が見えると聞いていた。
しかし——

いくら歩いても、前にも後ろにも明かりは見えない。
戻ろうと振り返っても、闇が飲み込むように背後を閉ざしていた。

おかしい。

そう思って足を止めたとき、「コツ、コツ」と靴音のようなものが響いた。
自分ではない、誰かの足音が、確かにこちらへ向かってくる。

「……誰?」

自分の声が、異様に反響して返ってくる。

その直後、スマホを持っていない左手に、冷たく細い指が絡みついた。
心臓が跳ね上がる。

おそるおそる左肩越しに視線を向けると、そこにはゼミ仲間のユキコがいた。
「やだ、死ぬかと思った。こんな場所でふざけないでよ!」

彼女は笑っていた。
口を開いてはいるが、何も話さない。

そのまま私の手を引き、出口の方へ歩き出す。
数歩進んだとき、ふと気づいた。

あれ?ユキコ?

ーー今日、ユキコはこの場に来ていない。

追いかけてくる声、「あと少しだったのに」

白い服の女、トンネル出典:stock.adobe.com

背筋が凍り、私は反射的にユキコの手を振り払った。

そして、もと来た道を全力で引き返した。
スマホのライトは、なぜか突然消えていた。

前も後ろもわからない。
それでも走るしかなかった。

後ろから、「あと少しだったのに」
誰かの声が、壊れた機械のように何度も繰り返し響く。

振り返ってはいけない
——反射的にそう思った。

あんなに短いはずのトンネルが、永遠に続くかのようだった。

息が切れ、足がもつれそうになった頃、ようやく遠くに車のライトが見えた。
「おい! 30分も何してたんだよ!」

入り口から、仲間たちの声が聞こえてくる。

あぁ、よかった。
私は戻ってきた。
自分の感覚では5分ほどだったのに、実際には30分も経っていたという。

もし、あのまま出口まで行っていたら——

私はいまここに、いなかったかもしれない。
それ以来、私はどんなトンネルも、徒歩で通れなくなった。

※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

斎 透(さい とおる)

◆斎 透(さい とおる)

noteにて短編小説を執筆中の、犬と暮らすアラサー女子です。
やるせない夜にそっと寄り添うような文章をお届けしています。
幼い頃から、オカルト好きな母と叔母の影響で、不思議な話に夢中に。
「誰でも一つは、背中がひんやりする話を持っている」をモットーに、
ゾッとするけど、どこか温度のある物語を綴っています。
美容やキラキラした話題に疲れた夜、よければ一編、覗いてみてくださいね。
●note:https://note.com/sai_to_ru

 

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斎 透(さい とおる)

noteにて短編小説を執筆中の、犬と暮らすアラサー女子です。
やるせない夜にそっと寄り添うような文章をお届けしています。
幼い頃から、オカルト好きな母と叔母の影響で、不思議な話に夢中に。
「誰でも一つは、背中がひんやりする話を持っている」をモットーに、
ゾッとするけど、どこか温度のある物語を綴っています。
美容やキラキラした話題に疲れた夜、よければ一編、覗いてみてくださいね。
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