【ゾッとする怖い話】窓の外にいた見てはいけないもの。何十年も塞がれていた理由

Lifestyle

叔母の家には、一部屋だけ窓が塞がれた古い和室があった。
南側の窓は開け放てば気持ちいい風と、光が降り注ぐ。――なのにベニヤ板で暗く塞がれ続けたのには、恐ろしい理由があったのだ。

― 広告 ―

塞がれた窓を持つ和室

古い窓のある和室出典:stock.adobe.com

親戚の家の二階には、すこし不自然な和室がある。
畳と障子、仏壇が置かれた古い一室。だが、その窓は外からベニヤ板で塞がれていた。
窓を開ければ光も風も入るはずなのに、しっかり釘で打ちつけられていて開かないようになっている。俺が子どもの頃からずっとそうだった。

「なんで?」と聞いても、おばさんは笑ってごまかすばかりだった。

年月が経ち、俺は社会人になった。
おじさんが入院し、おばさんもつきっきりで看病することになった、今年の夏。
運転できる俺が、空き家になるその家に泊まり込んで、雑事を手伝うことになった。

昼間でも薄暗い和室は相変わらずで、蝉の声と蒸し暑さがじっとりと部屋に染み込んでいた。
ふと、あのベニヤ板が目についた。以前より傷んでいて、角がめくれ始めている。

俺は気まぐれに工具箱を手に取り、釘を数本抜いてみた。
板が少し外れ、隙間から風が吹き込む。
さらに板を剥がすと、夏の光がふわっと差し込み、思った以上に気持ちがよかった。

「こんなに明るい部屋だったんだ」

つぶやきながら、俺はそのまま畳に横になり、いつしか眠ってしまった。

夢の中で

夢の中で、俺はまた和室にいた。
だが、空気が異常に冷たい。ふと窓を見ると、そこから何かがゆっくりと這い出てくる。

最初は人だった。青白い肌、くぼんだ目、痩せた手足。
だが次第に、形は崩れていき、皮膚は腐り、指の数もおかしくなり…人とは呼べない“なにか”が、次々と、窓から這い出てくる。

「……夢だ、これは夢だ」

そう思って目を覚ました。額は汗でびっしょりだった。
しばらくぼうっとしてから、窓に視線をやり――凍りついた。

ガラス一面に、無数の黒い手形が、内側からべたべたと貼りついている。指の長さも、手の数も不揃いで、人間のものではない。

それは、夢で見た化け物たちが、本当にこの窓から入り込んできた証拠のように思えた。

向こうに見えるもの

窓出典:stock.adobe.com

訳もわからず、俺は震える手でさっき外したベニヤ板を元に戻し、釘を打ち直した。
まるで外の“何か”を封じるように。
さらに工具箱からガムテープを引き出し、隙間を埋めるようにぐるぐると巻く。

張り詰めた沈黙の中作業を進めていると、ふと窓の向こうに目が留まる。
林の奥に不自然なものが見えた。
――石。
積み重なるように並んだ、灰色の墓石のようなもの。

あそこに、何が眠っているのか。
あの窓は、なぜ何十年も塞がれていたのか。

今さら、おばさんに尋ねる気にはなれなかった。
あの和室は、今も暗く窓がないままだ。

※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

斎 透(さい とおる)

◆斎 透(さい とおる)

noteにて短編小説を執筆中の、犬と暮らすアラサー女子です。
やるせない夜にそっと寄り添うような文章をお届けしています。
幼い頃から、オカルト好きな母と叔母の影響で、不思議な話に夢中に。
「誰でも一つは、背中がひんやりする話を持っている」をモットーに、
ゾッとするけど、どこか温度のある物語を綴っています。
美容やキラキラした話題に疲れた夜、よければ一編、覗いてみてくださいね。
●note:https://note.com/sai_to_ru

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

― 広告 ―
斎 透(さい とおる)

noteにて短編小説を執筆中の、犬と暮らすアラサー女子です。
やるせない夜にそっと寄り添うような文章をお届けしています。
幼い頃から、オカルト好きな母と叔母の影響で、不思議な話に夢中に。
「誰でも一つは、背中がひんやりする話を持っている」をモットーに、
ゾッとするけど、どこか温度のある物語を綴っています。
美容やキラキラした話題に疲れた夜、よければ一編、覗いてみてくださいね。
●note:https://note.com/sai_to_ru