見慣れない女子生徒
これは、私が学校で体験した奇妙な話。
ある日の移動教室。友人と一緒に音楽室へ移動していた私は、教室にリコーダーを忘れたことに気がつきました。
「先に行ってて」と友人と別れ、一人教室へと戻っていたときのことです。
教室へと続く真っ直ぐな廊下の真ん中に立ち尽くす、一人の女子生徒の姿がありました。
私から見て女子生徒は後ろ向きで、背中が見えている状態。
そのため顔などはわかりませんが、私の知ってるクラスメイトなどではないと感じていました。
次の授業が始まる寸前の時間で、忘れ物をした私は別として、他の生徒はみんな自分の教室や次の移動場所へ到着しているはず。
それなのに、この生徒はこんなところでなにをしているのだろう?
不思議に思いながらも教室へ向かうため、女子生徒のいる方へと小走りで駆けていきました。
︎おかしい動き
小走りで近付く私の足音が聞こえているはずですが、女子生徒は道を開けるどころか、こちらを気にかける素振りすらありません。
「邪魔だなぁ」なんて思いながら、その女子生徒の横を通り過ぎようとしたとき……
“スッ……”
女子生徒がなんだか奇妙な動きで、一気に2、3メートルほど前へ進んだのです。
それは、まるで台車で運ばれたかのように静かな動きでした。
驚いた私は、目を丸くして女子生徒を見やりました。
しかし、女子生徒は変わらずその場に立ち尽くしているのみ。
「もしかすると、ただ歩いただけ?私の見間違いだったのかも……」そんなふうに考え、再び女子生徒の横を通り過ぎようとすると……
“スッ……”
またしても、女子生徒は奇妙な動きで前へ進みました。
それはどう見ても、人間が歩いて進む動きではありません。
︎不気味な背中
私は叫び出したい気持ちを必死に抑え、バクバクとうるさい心臓に手を当てます。
そして来た道を振り返り、一刻も早くその場から走り去ろうとすると……
“スッ……スッ……”
先ほどの動きを繰り返し、女子生徒がまたも私の目の前に立ち塞がったのです。
「っきゃああぁああーっ!!」
思わず出た叫び声に、近くの教室にいた生徒や先生が駆け付けます。
そうして、パニック状態の私に次々に声をかけてくれる人たちの中に紛れ、女子生徒は静かに消えていきました。
このことを学校の友人に話すも、誰もそんな生徒など見たことがないといい、まともに信じてくれる人はいませんでした。
あの後ろ姿の女子生徒は、あの場で、一体なにをしていたのか……。
今でも思い出してはゾッとする、不思議な体験です。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆松木あや
ホラーやオカルトが好き。在住する東北の地で、ひんやりとした怖い話を収集しています。
恐怖体験の「おすそわけ」を楽しんでもらえると嬉しいです。
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