見知らぬクラスメイト
ある日の授業中。
私はいつのまにか寝てしまっていたようです。
ふと目を覚まし、机に伏せていた顔を上げると、見慣れたはずの教室にどこか違和感が。
よく見ると、教室にいる人間はすべて知らない人物だったのです。
着ている制服や教室内のレイアウト、黒板に書かれた文字までもが普段通りなのに、人物だけがまったく見知らぬ顔。
ぼんやりとした意識の中で、「きっとこれは夢だ」と考えた私は再び机に顔を伏せ、眠りの世界へと戻っていきました。
覚めない夢
再び目を覚ますと、またしても教室にいる全員が見知らぬ人間たちでした。
それに加え、今度は……
「……っ!?」
教室内にいる人間全員が、無表情で私を見つめているのです。
その表情からは、なんの感情も読み取れませんでした。
見知らぬ人間からの集中的な視線に耐えられなくなった私は、「きっとこれも夢だ」と、再び机に顔を伏せます。
しかし、今度はなかなか意識が飛んでいきません。
「早く眠って戻らなきゃ……」と焦れば焦るほど、どんどんと目が冴えていくようでした。
そうしているうちに、なんだかこの状況が現実のように思えてきたのです。そして再び、恐る恐る顔を上げてみると……
「っひぃ!?」
教室内の全員が私の席を取り囲み、円を作って立っていたのです。
私は転がり落ちるように席を立ちました。
すると、全員が私を逃がすまいと次々に体を押さえつけてきて……
「やっ、やめて!やめてよっ!」
大声を上げる私に馬乗りになり、首を絞め始めたのです。
「殺される……」そう思うものの、大勢の力には敵いません。
しばらく続けた抵抗もむなしく、だんだんと目の前が真っ暗になり、私は意識を失いました。
戻った意識、しかし
再び意識が戻ると、私は自分の席に座っていました。
するとまたもや教室中が私を振り返っており一瞬驚いたものの、今度はいつものクラスメイトでした。
「おいお前、寝てただろー」
その言葉を皮切りに、教室中が一斉に笑いに包まれます。
どうやら居眠りをする私が、先生に注意されたことにより起きた笑いのようです。
先ほどまでの恐怖の時間は、きっと丸ごと夢だったのでしょう。
ホッと安堵し、謝罪の言葉を発しようとしたときでした。
「っ……」
喉に、違和感が。
「げっ、げほっ、げぇっ!」
どうしようもなく息が苦しく、声がまったく出ないのです。
心配の表情を浮かべるクラスメイトを横目に、たまらず教室を飛び出しました。
その足でトイレへ駆け込み、鏡を見てみると……
「っひ!」
首にはくっきりと、誰かに締め付けられたであろう痕があるのです。
あの恐怖は、実際に私の身に降りかかったことだったのでしょうか。それとも……
夢と現実の境がわからなくなった私は、あれ以来、無表情の人間と目が合うとたまらなく恐怖を覚えるのです。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆松木あや
ホラーやオカルトが好き。在住する東北の地で、ひんやりとした怖い話を収集しています。
恐怖体験の「おすそわけ」を楽しんでもらえると嬉しいです。
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