ベランダの男子生徒
ある日の放課後。
友達の部活が終わるまで適当な空き教室で時間を潰していると、いつの間にか眠りに落ちていたようです。
目を覚ますと、一人きりの教室には夕日が差し込んでいました。
しばし携帯電話に視線を落としていたのですが、ふと顔を上げると。
「……ん?」
一人の男子生徒がベランダに立っている姿を見かけました。
このベランダは、両隣の教室のベランダと繋がっているため、どちらかの教室から来たのでしょう。
男子生徒は校庭側を向いていて、こちらには背を向けている状態。
じっとその場に立っているのですが、「かくれんぼかなにかをしているのかな?」と思っていました。
放課後になると、ふざけてベランダで遊んでいる男子生徒もいるため、このような光景は特段珍しいわけではありません。
気付いたこと
またしばらく携帯電話に没頭したのち、再び顔を上げると。
「え……?」
男子生徒が、こちらを見ていました。
逆光だったので、顔はよく見えないのですが、どうやら私を見ているようです。
「もしかしてクラスメイトや、知り合いだろうか……?」と思い軽く会釈をすると、手招きのような動作をする男子生徒。
やはり、知り合いだったようです。
私は席を立ち、男子生徒のいるベランダの方へと歩きました。
しかしどういうわけか、どんなに近付いても、男子生徒の顔はよく見えません。
窓際で足を止め、その窓に手をかけたとき。
私はふと、気付いてしまったのです……。
この教室には、ベランダがないことに。
私と、友人と……
「お待たせ、帰ろうか」
そのとき、部活を終えた友人が戻ってきました。
窓ガラスに手をかけたまま固まる私に、友人は「どうしたの?」と声をかけます。
窓の外の男子生徒は、いつの間にか、姿が見えなくなっていました。
私は友人に今あったことをすべて話しました。
すると、おもしろがった友人が、「どれどれ」と窓を開けて外へ身を乗り出します。
「なんにもいないよー、騙したなー!」なんてのん気に話す友人を遠巻きに見ながら、私はまた、気付いてしまったのです。
窓ガラスに映る、教室と、私と、友人。
そしてもう一人、顔がハッキリしない男子生徒が並んでいることを……。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆松木あや
ホラーやオカルトが好き。在住する東北の地で、ひんやりとした怖い話を収集しています。
恐怖体験の「おすそわけ」を楽しんでもらえると嬉しいです。
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