肝試し
友人たちと肝試しに行ったんです。
場所は、古い集合住宅。
ずいぶん前に閉鎖されていて、いわゆる心霊スポットとして地元ではそこそこ有名な場所でした。
もちろん勝手に入るのはよくないんですが、当時はそういうことをあまり深く考えていなくて。
男4人で、夜中に車で向かいました。
建物はかなり傷んでいました。
壁は黒ずんでいるし、廊下には何なのかわからないゴミも落ちています。
誰もいない部屋を覗いたり、写真を撮ったりしながら上の階へ進んでいきました。
最初は怖がっていた友人もだんだん慣れてきて、「なんもねえじゃん」なんて笑っていました。
階段
最上階の廊下を歩いていると、先頭にいた友人が立ち止まりました。
「え、なんか階段ある」
廊下の突き当たりに、上へ続く階段がありました。
暗くて、その先までは見えません。
「屋上出れんじゃね?」
誰かが言いました。
屋上に出られるなら行ってみようということになって、1人がスマホのライトをつけて階段へ向かいました。
僕たちはその場で待っていました。
少しすると、
「おーい」
上から友人の声がしました。
「なにー?」
返事をしましたが、それきりです。
「なー、屋上出れた?」
返事はありません。
僕らも、だんだん怖くなってきました。
上に行った友人に何度も電話をかけましたが、出てくれません。
最上階
階段を上る勇気が出なくて、一度建物の外へ出ることにしました。
外から見れば屋上にいるのが見えるかも、と思ったんです。
1階までもつれるようにして階段を降りて、外から電話をかけようとして愕然としました。
僕たちがいた階の上には、屋上なんてありませんでした。
フェンスもないし、階段室のような出っ張りもありません。
そもそも、あの場所に上へ続く階段を作れるような構造ではなかったんです。
友人の名前を呼びながら周囲を探しました。
電話もかけました。
呼び出し音は鳴るのに、出ません。
警察にも連絡しました。
勝手に建物へ入ったことをかなり怒られましたが、それどころではありません。
翌朝まで探しても、友人はみつかりませんでした。
あの日の動画
しばらくして、あの日撮った動画がスマホに残っていることに気づきました。
建物に入ってから、ふざけながら撮っていた動画です。
何か手がかりがあるかもしれないと思ってみんなで確認しました。
最上階の映像も残っていました。
廊下の奥。
確かに、階段があります。
友人が一人でそこへ向かっていきます。
そして階段に足をかける直前、こちらを振り返りました。
友人は階段の上を見ながら、
「上に誰かいる」
そう言っていました。
その直後、スマホのカメラが一瞬だけ階段の上を映します。
暗くてほとんど何も見えません。
ただ、一番上の段に、誰かの足だけが映っていました。
小さい裸足の、子どもの足でした。
※この物語はフィクションです。
※この記事に使用している画像はイメージです。

◆味醂
子どもの頃から怖い話が好きで、ホラー小説やネット怪談など、文章作品を中心に親しんできました。
映像作品の痛そうな表現や急に驚かせる演出は少し苦手ですが、想像がふくらむ怖さや、日常の違和感が少しずつ不穏さを増していくような話に惹かれます。
読んだあとふとした瞬間に思い出してしまうような“あとから効いてくる怖さ”を大切にしています。
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