田舎の光景
皆さんは、「田舎」にどんなイメージをお持ちですか?
静かな環境や豊かな自然。
人と人のあたたかい交流を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし私は「田舎」と聞くと、母が生まれた村、そして祖母の家を連想し、背筋が寒くなるのです。
小学校1年生の夏休み、私は母方の祖母の家に預けられていました。
私には生まれたときから父親がおらず、母は生活を守るために働きづめ。
夏休み期間中、居場所もやることもない私を不憫に思った祖母が、しばらくのあいだ面倒を見てくれることになったのです。
そんな優しい祖母の家は、S県の山間の集落にありました。
その一帯は当時でも過疎化が進んでおり、住民のほとんどは高齢者です。
同じ年頃の子どもはいませんが、祖母はもちろん、近所に住む人からも可愛がってもらい、田舎暮らしを満喫していた私。
「○○ちゃん、大きくなったね。これ食べていきなさい」
よく隣に住むおばあちゃんから、スイカやアイスクリームをご馳走になったことを覚えています。
不可解な祖母の家
家に帰っても「おかえり」と微笑んでくれる人のいない都会暮らしより、みんなが笑顔で接してくれるこの村の方がずっといい。
そう感じていた私ですが、祖母の家に関して、2つだけ不可解なことがありました。
ひとつめは、不思議な間取りです。
祖母の家は外から見ると一般的な2階建ての民家なのですが、なぜか全体的に天井が低く、3階建ての構造となっています。
最上階へと上がるための階段はふすまで隠されており、「決して上に行ってはいけない」と、普段は優しい祖母から厳しく言い聞かされていました。
ふたつめは、手鏡から姿見、果ては洗面所やお風呂に至るまで、祖母の家には鏡という鏡が一切なかったことです。
オシャレにさほど興味がない私でも、これには苦労しました。
「鏡を買ってほしい!」と祖母に訴えても、困った顔で「うちでは鏡は使えないの」と言われるばかり。
子どもながらに、祖母はなにか隠し事をしていると感じていましたが、のちに私はこの2つの謎の理由を最悪な形で知ることになったのです。
3階の声
ある雨の日、2階の寝室でいつものようにお人形遊びをしていると、天井から動物の鳴き声が聞こえてきました。
山に囲まれた田舎では、ネズミや狸、ハクビシンなどが天井裏に入りこんでしまうことも珍しくありません。
そのため、私も特に気にはしていませんてした。
“ァア……ギャア……ギャアア……オギャアア……”
しかし、時間が経つごとにその声は大きくなり、最終的に人間の赤ちゃんの泣き声がハッキリと聞こえるようになりました。
「3階に赤ちゃんがいる……?どうして……?」
この家は、なにかがおかしい。
そう感じていた私は、禁じられた3階へ足を運んでしまったのです。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。
◆底渦
中学生で都市伝説にドハマりし、2chホラーと共に青春を駆け抜けたネット廃人系オカルトライター。
怖い話の収集・考察が趣味です。
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