亡くなったおじいさん
その家は、元々高齢のご夫婦が二人で暮らしていました。
数年前におばあさんが亡くなってからは、おじいさんの一人暮らし。
しかし、そのおじいさんもつい一ヶ月ほど前に息を引き取り、今は無人の空き家となっています。
おばあさんが亡くなって以降、おじいさんも心にぽっかり穴が空いてしまったのでしょうか。
度々ボケたことを口にするようになっていましたが、今頃は大好きなおばあさんと天国で再会を果たしていることでしょう。
ですがここ最近、なんだか気味の悪い光景を目にするように。
誰もいないはずの2階の窓に、男性の姿が映ることがあるのです。
ご夫婦の親族などが家の片付けにでもきているのかもしれませんが、それにしてはどうも様子がおかしく……。
その男性はただその場に立ち止まって、黙って窓の外を見ているのです。
異様な雰囲気
なんとなく気味の悪さを感じながらも、その家の前を通るときは2階の窓に目がいくようになりました。
「……あ」
その日もまた、2階に男性の姿が。
「本当に、いつもなにをしているのだろうか」と、いつもより注意深く男性を見つめていると気付いたことがあります。
男性はその場から微動だにしないどころか、異様なほどに“動き”がないのです。まばたきすら、している様子がありません。
その姿からはまるで、生気を感じないようで……
そんなことを考えていた、そのときでした。
「えっ……?」
男性がその場から、“ふっ”と、姿を消したのです。
おじいさんの言葉
それからも度々、男性が消える瞬間を目撃することがありました。
そう、あれは、生きている人間ではなかったのです……。
私はふと、生前のおじいさんの言葉を思い出しました。
おばあさんがいなくなったあとのおじいさんは、時々変なことを口にするようになっていたのです。
「知らない男が家に現れる」「知らない男が首を締めてくる」など、ありもしないことを口走っては、周りを困らせていました。
きっと、おばあさんがいなくなったことで認知症のような症状が現れたのだろうと、周りも対して気にも止めていませんでしたが……
「もしかすると、おじいさんはあの男性に……」
男性はあの家に住み着くため、おじいさんを葬ったのではないかと私は考えてしまうのです。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆松木あや
ホラーやオカルトが好き。在住する東北の地で、ひんやりとした怖い話を収集しています。
恐怖体験の「おすそわけ」を楽しんでもらえると嬉しいです。
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