嫌な気配の部屋
『角部屋は、霊が寄り付きやすい』
そんな話を耳にしたことはありませんか?
これは当時、私がアパートの角部屋に入居したときの話。
下見に訪れたときから、部屋の空気にどこか違和感を覚えてはいました。
しかし、家賃も比較的お手頃で、その他の条件も悪くない。
そんな物件だったため「まあいっか」とその部屋への入居を決めましたが、すぐに部屋の中で異変が起こるように。
それは夜中、トイレに行くと起こるものでした。
用を足し、トイレの外に出ようとすると、ドアが開かなくなるのです。
立て付けが悪い、というわけではなさそうでした。ドアノブを思い切り押したり引いたりしても、ドア自体がビクともしないのです。
そのまま格闘していると毎回数分後にはすんなりと開く、というものでした。
しかたないのでドアを開けたまま用を足すようにすると、今度はドアが勝手に“キィ、キィ”と前後に動くのです。
私は極力、夜中にトイレに行くのをやめるようにしました。
︎夜中のトイレ
寝る前は水分を控えるなど工夫して、夜中のトイレを避けていた私。
しかしある夜、どうしてもトイレに行きたくて目が覚めました。
歩いて10分ほどのコンビニへ行くことも考えましたが、こんな夜中になんだかそれは気が引けます。
しかたなく、久しぶりに夜中のトイレへ行くことにしました。
ドアを開けたまま、用を足していると……
“キィ、キィ”
例の如く、ドアが動き出します。
気にしないように、用足しを続けていると……
“バタン!!”
突然、物凄い勢いでドアが閉まったのです。
ドアの向こう
こんなことは初めてだったので、心臓が飛び出しそうな気分でした。
すると、そんな私に追い打ちをかけるように……
「うっ、うわっ!?」
トイレのドアには、すりガラス状の小窓がついていたのですが、トイレの外を人のようなものが通り過ぎたのです。
その人物はしばらくトイレの前を行ったり来たりと繰り返し、最後はドアの前でこちらを向いて立ち止まりました。
当然、そんな状況でトイレの外に出られるわけもなく、そのまま朝までトイレに籠るはめに。
その人物は朝の陽ざしと共に、いつの間にか消えていきました。
恐怖を覚えた私は、翌日すぐにアパートを解約。
不動産屋をほぼ問い詰める形で話を聞くとこの部屋は、よくそういった類のクレームがくる部屋といいます。
しかし、どうやら事故物件というわけではなく、いつからか心霊現象が起きるようになったのだと。
角の部屋には、幽霊が寄り付く。
あなたも物件探しの際は、角部屋にご注意を……。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆松木あや
ホラーやオカルトが好き。在住する東北の地で、ひんやりとした怖い話を収集しています。
恐怖体験の「おすそわけ」を楽しんでもらえると嬉しいです。
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