子どもの洗濯物が落ちてくる
最近、上の階から子どもの洗濯物がよく降ってきます。
最初はキャラクター柄の小さなタオルハンカチひとつでした。
その日は風が強かったわけでもないので、真上の部屋のものだろうと思い訪ねましたが不在。
念のため両隣にも確認し、どちらも心当たりはないと返答を貰いました。
仕方なく、「下の階の者です。私のベランダに落ちていましたよ」と手紙を添え、紙袋に入れて真上の部屋のドアに掛けておいたんです。
改善されない落とし物
ところが、それからも子ども用の服や下着などが次々と落ちてきます。
私は夜勤なので子どもがいるような家庭とは生活時間が合わないのか、何度訪ねても住人には会えません。
最初こそ丁寧な手紙を添えていましたが、靴まで落ちてきた頃にはうんざりしていました。
「いい加減、落ちないように気を付けてください」
レシートの裏にそう書き、適当なビニール袋に入れて返すようになっていました。
ありえない落とし物
そして今朝。
仕事から帰るとベランダをまず確認する悲しい習慣がついてしまった私の視界には、黒いランドセルが。
……さすがにおかしい。
腹が立つより先に「子どもは大丈夫なのか?」という不安が湧いてきました。
このまま寝る気にもなれず、普段なら眠っている時間まで待って上の部屋を訪ねると、ようやく男性が出てきました。
「下の階の者なんですが……」
そう告げた瞬間、なぜか男性の顔が強張ります。
やっぱり、何か隠している。
そう思って問い詰めましたが、話しているうちに妙なことが分かりました。
男性は一人暮らしだったのです。
しかも彼は彼で、知らない子どもの服を何度もドアに掛けられ、私から嫌がらせを受けていると思っていたそうです。
念のため近所の人にも確認しましたが、男性が一人暮らしなのは間違いありません。
男性からしてみても嫌がらせの為だけにランドセルを購入するとは考えにくかったようで、私の言葉を信じてくれました。
……では、子どもの物としか思えない数々の落とし物は、何処から落ちてきたのか?
二人で青ざめていると、事情を聞いた近所の住人が言いにくそうに口を開きました。
「……これ、10年ぐらい前の話なんだけどさ。さすがに怖いから言うわ」
昔、あの部屋には親子が暮らしていたそうです。
そしてある日、子どもがベランダから突き落とされ、亡くなったのだとか。
賃貸での事故の報告義務のある年数は過ぎていたので、私も男性もその事を知らずに住んでいたのです。
心霊的なものについて、私は信じていません。
……だけど、現実に起こっていることが恐ろしくて、私はすぐに別の場所に引っ越しました。
男性も、その話を聞いた瞬間に引っ越しを決意していました。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆さしすせそそぎ
怪談や都市伝説、モキュメンタリー作品が好きで日頃からさまざまなホラーコンテンツに触れています。不気味な余韻が残る物語や「読まなければよかった」と思いながらも続きが気になってしまうような怖い話をお届けできればと思っています。
特に、人の悪意や心理が生み出す恐怖を描いた作品や読み終えたあとにもう一度振り返りたくなるような意味が分かると怖い話、ひんやりとした読後感が印象に残る物語が好きです。
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