意外と快適な事故物件
数か月前、私はいわゆる「事故物件」に引っ越しました。
以前の住人が室内で亡くなっているらしく、それがつい最近なんだとか。
でもその分、家賃は相場よりかなり安いんですよね。
話を聞いた当初はさすがに迷いましたが、駅から近くて部屋も広くてトイレと風呂も別。
何より、少しでも生活費を抑えたかったので思い切って契約しました。
住み始める前はそれなりに覚悟していました。
夜中に物音がするとか、誰もいないのに声がするとか、そういうオカルトてきなこともあるかもしれないと思ってましたよ。
ところが、まったく何も起こりません。
古い和室は少し不気味でしたが、住んでしまえばいたって普通の部屋です。
気づけばあっという間に数か月が経ち、「事故物件っていってもまぁ、そりゃあこんなものか」と完全に慣れていました。
友人が泊まったその夜
そんなある日、学生時代の友人が遊びに来ました。
事故物件だと話すと「あんた昔からガサツだけどさ!いくらなんでもそんなとこに住むなんて普通じゃないって!」と怖がっていました。
でも、酒を飲んでいるうちに終電を逃してしまい、そのまま泊まることになったんです。
私はいつも通り奥の部屋で寝て、友人には隣の和室を使ってもらいました。
翌朝。目を覚ますと、友人はすでに起きていました。
でもなんだか妙に顔色が悪く、帰り支度まで済ませています。
「ねえ、夜起きてた?」
突然そう聞かれました。
私は寝付きがよく、友人が隣にいても朝までぐっすり熟睡していたので、質問の意味がよくわかりません。
どうやら友人によると、夜中にふと目を覚ましたとき、開け放した襖の向こうに私が立っていたというんです。
暗い部屋の真ん中で、無言のまま友人を見ていたのだとか。
「声かけても返事しないし、ずっとこっち見てるから怖かったんだよ」
気のせいじゃなかったんだ
私は笑って否定しました。
夜中に起きた記憶なんてありません。
すると友人は、さらに青ざめました。
「……やっぱ、気のせいじゃなかったんだ」
友人は夜中、様子がおかしい私?に怖くなって、トイレをさっさと済ませて寝直そうとしたそうです。
その途中に、私が寝ている部屋の前を通ると布団には、ちゃんと私が眠っていたと。
それなのに隣の和室へ戻ると、もう一人の「私」はまだ同じ場所に立っていた。
友人はそれ以上何も話さず、逃げるように帰っていきました。
その日以降も私はこの家に住み続けていますが、もうひとりの自分なんて見たことがありません。
「ナニかが見える」のと、「ナニかがいるのに見えない」のは、どちらの方がましなのだろうか……。
そんなことを、最近はぼんやり考えています。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆さしすせそそぎ
怪談や都市伝説、モキュメンタリー作品が好きで日頃からさまざまなホラーコンテンツに触れています。不気味な余韻が残る物語や「読まなければよかった」と思いながらも続きが気になってしまうような怖い話をお届けできればと思っています。
特に、人の悪意や心理が生み出す恐怖を描いた作品や読み終えたあとにもう一度振り返りたくなるような意味が分かると怖い話、ひんやりとした読後感が印象に残る物語が好きです。
※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。





