行方不明の郵便物
私は団地に住んでいるのですが、ここ数か月、郵便物が頻繁になくなるという妙なことが起きていました。
最初は新聞でした。
毎朝届くはずなのに、週に何度か郵便受けが空っぽになっているのです。
そのうち、チラシや通販で注文した小物まで届かなくなりました。
配達業者に問い合わせても、配達は完了しているとのこと。
管理人にも相談しましたが、原因は分かりません。
不審な男
そんなある日の夜。
仕事から帰宅すると、郵便受けの前に見知らぬ男性が立っていました。
男性は私の郵便受けを開け、何かを中に入れようとしています。
「ちょっと、何してるんですか!」
思わず声をかけると、男性は飛び上がるほど驚きながら、私の名前を呼びました。
初対面のはずなのに、どうして私の名前を知っているのでしょうか。
「違うんです!返そうと思って!」
男性の手には、見覚えのある通販の封筒が握られていました。
先週、届かないと問い合わせた商品です。
警察を呼ぼうとスマホを手に取ると、男性は必死になって事情を説明し始めました。
歪んだ正義心
どうやら私には、以前から悪質なストーカーがついていたらしいのです。
その人物は私の郵便受けに、嫌がらせの手紙や気味の悪い贈り物を繰り返し入れていたのだとか。
「でも大丈夫、安心してください。全部僕が回収してましたから!」
男性は胸を張って言いました。
この男性は、私に嫌がらせをしている人物の存在にいち早く気づき、私が怖い思いをしないように毎日郵便受けを確認していたそうです。
ただ、相手がいつ手紙を入れるかわからないため、時間がない日は郵便受けの中身を丸ごと持ち帰っていたとのこと。
当然、そのときは普通の郵便物や新聞まで持っていくことになります。
「ちゃんと仕分けして必要なものは返すつもりだったんですけど、あなたに見つからないようにすると、なかなか難しくて……」
私は呆れて言葉も出ませんでした。
この人はさもよいことをしているかのように語っていますが、勝手に人の郵便物を持ち去っている時点で十分すぎるほどおかしいです。
そのことを指摘すると、男性は心底不思議そうな顔をしました。
「でも、あいつから守ってあげたのは僕ですよ?」
……結局、話が通じないことを悟った私は警察に通報し、男性を引き渡しました。
「正義心」が非常に強い彼は、もう1人のストーカーについても詳しく警察に話したようで、そちらについても対応してもらえたとのことです。
嫌がらせをするストーカーと、それを防ぐために私を監視していたストーカー。
本人たちは何やら争っていたようですが、私からすれば、どちらも同じくらい恐ろしくて、最低な存在です。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆さしすせそそぎ
怪談や都市伝説、モキュメンタリー作品が好きで日頃からさまざまなホラーコンテンツに触れています。不気味な余韻が残る物語や「読まなければよかった」と思いながらも続きが気になってしまうような怖い話をお届けできればと思っています。
特に、人の悪意や心理が生み出す恐怖を描いた作品や読み終えたあとにもう一度振り返りたくなるような意味が分かると怖い話、ひんやりとした読後感が印象に残る物語が好きです。
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