帰り道
今の職場、マイカー通勤OKなんです。
その日は仕事が長引いて、会社を出たのは夜の11時近くでした。
会社から自宅までは車で30分ほど。
大通りを抜けると、街灯の少ない道が続きます。
運転していると、バックミラーに1台の車が映りました。
白っぽい、少し古い軽自動車でした。
何度曲がっても、ずっと後ろからついてくるんです。
大通りから住宅街に入っても、細い道を曲がっても、同じ車がついてきました。
「あの車、何かおかしいな……」
コンビニ
偶然、帰る方向が同じだけかもしれない。
そう思おうとしましたが、車間距離もずっと変わらないんです。
私は怖くなって、途中のコンビニに入ることにしました。
駐車場に車を停めて、後ろを確認します。
あの軽自動車は見当たりませんでした。
店の前の道路を見ても、それらしい車は走っていませんでした。
少し安心した私は、飲み物を買ってから帰宅しました。
映っていない
翌日、同僚にその話をしました。
「それ、ちょっと怖くない?コンビニを出たあとは確認してないんでしょ?まだついてきてるかもしれないじゃん」
「ちょっと、やめてよ」
「いや本当に。ドラレコついてるよね?確認した方がいいよ」
そう言われて、私は帰宅後に録画を確認することにしました。
あの軽自動車がどこからついてきたのか、コンビニに入ったところで本当にいなくなったのか、確かめようと思って。
ところが、後方の映像を見て驚きました。
何も映っていないんです。
大通りを走っているときも、住宅街に入ってからも、後続車は1台も映っていません。
バックミラーには、確かに白い軽自動車が映っていたのに……。
後ろにいたもの
何度も見返していると、コンビニの駐車場に入る直前に、妙な音が入っていたんです。
トン、トン。
何かが車の後ろを軽く叩くような音です。
気になった私は、翌朝車を確認してみました。
すると、後部バンパーに小さな汚れがいくつもついていたんです。
近づいてよく見ると、それは手形でした。
子どものもののような、小さな手形。
ひとつやふたつではありません。
バンパーの端から端まで、びっしりとついていました。
急いで洗車に行きました。
それ以来、怖いことは何も起こっていません。
でも今も、白い軽自動車を見ると少し身構えてしまいます。
※この物語はフィクションです。
※この記事に使用している画像はイメージです。

◆味醂
子どもの頃から怖い話が好きで、ホラー小説やネット怪談など、文章作品を中心に親しんできました。
映像作品の痛そうな表現や急に驚かせる演出は少し苦手ですが、想像がふくらむ怖さや、日常の違和感が少しずつ不穏さを増していくような話に惹かれます。
読んだあとふとした瞬間に思い出してしまうような“あとから効いてくる怖さ”を大切にしています。
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