思い出のお姉ちゃん
子どもの頃、私は親戚のお姉ちゃんによく遊んでもらっていました。
お姉ちゃんは私よりひと回り以上年上で、古いアパートにひとりで暮らしていました。
両親が忙しいときには、よくその部屋に預けられたものです。
私の好きなお菓子を用意してくれたり、一緒に流行りのゲームをしてくれたりと、私にとっては本当の姉のような存在でした。
ところが、大学受験の頃から忙しくなり、自然と会う機会が減って、いつの間にか疎遠になってしまいました。
現在のお姉ちゃん
それから十数年が経ったある日、実家で昔の写真を整理していると、お姉ちゃんと撮った一枚が出てきました。
懐かしくなって母に近況を尋ねると、意外な答えが返ってきたのです。
「そういえば、あの子とはもう何年も連絡が取れていないのよ」
親戚の誰も、今どこで何をしているのか知らないそうです。
気になった私は、昔の住所を頼りにお姉ちゃんのアパートを訪ねてみました。
すると、建物はまだ残っていました。
2階にある、お姉ちゃんが暮らしていた部屋の前まで来ると、驚いたことに表札にはまだ彼女の名字があります。
もしかすると、連絡を絶っているだけで今もここに住んでいるのでしょうか。
私は少し緊張しながらインターホンを押しました。
しばらくすると、扉の向こうから声が聞こえました。
「……もしかして、○○ちゃん?」
私の名前を呼んだのは、間違いなくお姉ちゃんの声でした。
「そうだよ!久しぶり!」
嬉しくなって答えると、向こうからも小さな笑い声が返ってきます。
「大きくなったね。綺麗になってたから、最初は誰かわからなかったよ」
ただ、扉は開きません。
「ごめんね。今はちょっと会えないから、また来てくれる?」
突然訪ねたのだから仕方ありません。
私は「また来るね」と伝え、その日は帰ることにしました。
再び訪れたアパート
帰宅して母に報告すると、母はひどく驚いていました。
「本当に、あの部屋にいたの?」
話を聞くと、親戚たちは数年前、お姉ちゃんを心配してアパートまで訪ねていたそうです。
しかし、管理人からはすでに退去しており、部屋も空室になっていると聞かされたとのこと。
「表札も残ってたし、声だって聞いたよ」
説明しても母には納得してもらえず、私を疑っている様子でした。
そこで私も、何だかおかしいと思ったんです。
直接会えなかったこともあり、翌週もう一度アパートを訪ねました。
ところが、今度は何度インターホンを押しても返事がありません。
不審に思っていると、通りかかった大家さんらしき男性に声をかけられました。
事情を話すと、男性は困惑した顔で言いました。
「あそこ、もう何年も誰も住んでいませんよ。表札もずっと外したままです」
慌てて扉を見ると、確かに表札はありません。
先週、あの名字を見たはずなのに。
私の記憶の中のままの、優しい声で呼びかけてくれたのに。
お姉ちゃんに会いたい一心で見た幻覚だったのでしょうか。
それにしては、あまりにもリアルで……。
お姉ちゃんは今も、行方知れずのままです。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆さしすせそそぎ
怪談や都市伝説、モキュメンタリー作品が好きで日頃からさまざまなホラーコンテンツに触れています。不気味な余韻が残る物語や「読まなければよかった」と思いながらも続きが気になってしまうような怖い話をお届けできればと思っています。
特に、人の悪意や心理が生み出す恐怖を描いた作品や読み終えたあとにもう一度振り返りたくなるような意味が分かると怖い話、ひんやりとした読後感が印象に残る物語が好きです。
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