夜道のカーブミラー
最近、妙なことが起きたんです。
仕事帰り、私はいつも駅の地下道を通っています。
その地下道は途中で大きく曲がっており、曲がり角には歩行者同士がぶつからないよう、カーブミラーが設置されています。
ある日の夜、いつものように地下道を歩いていると、ミラーに妙なものが映っていることに気づきました。
小学生くらいの女の子です。
白っぽい服を着て、私の少し後ろに立っていました。
こんな時間に子どもがひとりでいるなんて珍しいなと思い、何気なくミラーを見つめていました。
すると、女の子がにやりと笑ったのです。
子どもらしい無邪気な笑顔ではありません。
誰かが困るのを楽しみにしているような、底意地の悪い笑みでした。
気味が悪くなった、そのときです。
女の子がゆっくりと腕を上げ、地下道の端を指さしました。
何をしているのだろうと思い、振り返ってみました。
しかし、そこには誰もいません。
後ろにはまっすぐな通路が続いているだけで、人が隠れられそうな場所もありませんでした。
驚いてミラーを見直すと、女の子の姿も消えていました。
女の子の視線の先には
「……今の、何だったんだろう」
疲れているせいで、変なものが見えたのかもしれません。
そう考えて立ち去ろうとしましたが、ふと女の子が指さしていた場所が気になりました。
通路の端、壁際の薄暗いところです。
何か落ちているのでしょうか。
そう思いながら近づいて覗き込んだ私は、思わず悲鳴を上げました。
そこにあったのは、動物の死骸。
しかも、事故や病気で死んだとは思えないほど、ひどい状態でした。
何がどうなっているのか、詳しく確かめる気にはなれません。
ただ、目に入ったものがあまりにもおぞましく、私はその場から動けなくなってしまいました。
そのときです。
どこからともなく聞こえる声
「ふふ!あははははっ!!」
楽しくて仕方がないといった様子の、女の子の笑い声が響き渡りました。
慌てて周囲を見回しましたが、やはり誰もいません。
カーブミラーにも、私ひとりしか映っていませんでした。
私は逃げるように地下道の外へ。
けれど、あの動物をそのままにしておくのも気になり、少し落ち着いてから警察に通報しました。
死骸の状態が不自然だったことも伝えると、現場を確認してもらえることに。
後日問い合わせたところ、死骸はすでに回収されていたものの、なぜあのような状態になっていたのか、原因は不明とのことでした。
以来、あの地下道を通るのは避けています。
今でも思い出すのは、ミラーに映っていた女の子の笑顔です。
彼女が浮かべていた底意地の悪い笑みと、あの場にそぐわない楽しげな声。
いったい、何を意味していたのでしょうか。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆さしすせそそぎ
怪談や都市伝説、モキュメンタリー作品が好きで日頃からさまざまなホラーコンテンツに触れています。不気味な余韻が残る物語や「読まなければよかった」と思いながらも続きが気になってしまうような怖い話をお届けできればと思っています。
特に、人の悪意や心理が生み出す恐怖を描いた作品や読み終えたあとにもう一度振り返りたくなるような意味が分かると怖い話、ひんやりとした読後感が印象に残る物語が好きです。
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