低用量ピルとは?
経口避妊薬とも呼ばれている低用量ピルは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という2つの女性ホルモンが含まれているホルモン剤で、毎日一回服用することにより排卵を抑制し、子宮内膜の増殖を抑える働きがあります。
低用量ピルにはコンドームよりも高い避妊効果が期待でき、正しく服用すれば確実に避妊できるといわれていますよ。
月経をコントロールしたり、生理前のイライラや生理痛の軽減も感じられたりすることから、海外では多くの女性が手に取っているようです。
世代とは?
二つの女性ホルモンの一つである、黄体ホルモンの種類によって第一世代、第二世代、第三世代と分類されている低用量ピルは分類されています。
低用量ピルに含まれている黄体ホルモンは人工的に合成されていて、世代が進むほど黄体ホルモンとしての働きが強くなるようにできています。
<世代>
- 第一世代 → ノルエチステロン(NET)
- 第二世代 → レボノルゲストレル(LNG)
- 第三世代 → デソゲストレル(DSG)
卵胞ホルモンは第一世代、第二世代、第三世代すべて共通してエチニルエストラジオール(EE)という薬が使われていますよ。
相性とは?
相性(そうせい)は、1シートのうちの卵胞ホルモンと黄体ホルモンの配合量について示すものです。
<相性>
- 一相性 → 配合量が変わらないもの
- 二相性 → 配合量が異なる2種類の薬が入っているもの
- 三相性 → 配合量が異なる3種類の薬が入っているもの
21錠タイプと28錠タイプの違いとは?
低用量ピルは1ヶ月分で1シートになっていて、21錠タイプと休薬期間に内服するための偽薬が含まれている28錠タイプがあります。
<21錠タイプと28錠タイプの違い>
- 21錠タイプ → 毎日決まった時間に1錠ずつ21日間服用し、その後7日間服用を休止し、翌日から新しいシートの服用を開始するもの
- 28錠タイプ → 毎日決まった時間に1錠ずつ28日間服用し続けるもの
実薬が21錠であることに変わりはないのですが、28錠タイプには毎日服用する習慣をつけるために考えられた7錠の偽薬(砂糖のみで、ホルモン成分が入ってないもの)が付いています。
休薬期間空けの飲み忘れが心配であれば、28錠タイプが向いているかもしれません。
自分の好みやライフスタイルにあったタイプを選ぶのがポイントですよ。
低用量ピル種類一覧
一口に低用量ピルといってもいろいろな種類があります。
まずは、卵胞ホルモンの量をさらに少なくした超低用量ピルを除く低用量ピルの種類をご紹介します。
医療保険が適応されるため、自己負担が少ないものから、保険が適応されないものまでさまざまです。
それぞれの種類を比較してみましょう。
第一世代▶️ルナベルLD(1相性)
ルナベルLDは、ノルエチステロン・エチニルエストラジオール錠という一般名を持つ低用量ピルです。
卵胞ホルモンと黄体ホルモンを補充して血中にこれらのホルモンを増加させることで、脳からのホルモンの分泌を抑制する薬!
これによって避妊や月経困難症、子宮内膜症、PMS、生理痛の改善などさまざまな効果を発揮します。
名前:ルナベルLD
値段(1ヵ月分):1,500円〜
避妊率:避妊を目的にして用いる低用量ピルよりもエストロゲンが少ないため、日本国内では避妊目的で処方はできない
特徴的な効果:月経困難症、子宮内膜症の治療に用いられる
副作用:不正出血、頭痛、身体のだるさ、悪心、めまい、ふらつき、静脈血栓症など
第一世代▶️フリウェルLD(1相性)
フリウェルLDは、ルナベルLDのジェネリック医薬品(後発医薬品)です。
そのため、ルナベルLDと効果があまり変わらず、月経困難症、子宮内膜症、PMS、生理痛の改善・緩和に用いられます。
名前:フリウェルLD
値段(1ヵ月分):820円〜
避妊率:避妊を目的にして用いる低用量ピルよりもエストロゲンが少ないため、日本国内では避妊目的で処方はできない
特徴的な効果:月経困難症、子宮内膜症の治療に用いられる
副作用:不正性器出血、希発月経、頭痛、悪心、月経過多(少)、頻発月経、乳房不快感など
第一世代▶️シンフェーズ(3相性)
シンフェーズは、サンデースタートと呼ばれる飲み方をする低用量ピルで、月経開始後の最初の日曜日から飲み始めるのが特徴的!
女性のホルモン分泌系に作用して排卵を抑え、妊娠を防ぐ効果が期待できる薬です。
出血量が減りやすく、月経困難症のコントロールに優れ、子宮内膜症の治療効果も高いので、PMSや生理痛の改善にも◎
名前:シンフェーズ
値段(1ヵ月分):2,500円前後
避妊率:必ずしも100%ではなく、飲み忘れを含めた一般的な使用における失敗率は9%と報告されている
特徴的な効果:避妊
副作用:手足のしびれ、息切れ、胸の痛み、頭痛、脱力、めまい、全身のかゆみなど
第一世代▶️オーソM
オーソMは、月経前症候群を軽減させる効果が期待できる低用量ピルです。
※平成29年1月をもって製造・販売
第二世代▶️トリキュラー(3相性)
成分の配合量が異なる3種類の薬が1シートに入っているトリキュラー♡
ホルモン剤の分量が最小限にとどめられていたり、自然なホルモンバランスに近づけてられていたりするので、少ない負担で高い避妊効果が得られる低用量ピルです。
女性ホルモンのバランスが整うことからPMSの改善にも効果があるとされています。
名前:トリキュラー
値段(1ヵ月分):2,000円前後
避妊率:毎日飲み忘れずに規則正しく内服できた場合は約99%
特徴的な効果:避妊、PMSの改善
副作用:吐き気、乳房の張り、頭痛、嘔吐、下腹部痛など
第二世代▶️ラベルフィーユ(3相性)
ラベルフィーユは、トリキュラーのジェネリック医薬品(後発医薬品)です。
トリキュラーと同じ成分の薬になるので、避妊率が高いだけでなく、PMSの改善効果も期待できます。
名前:ラベルフィーユ
値段(1ヵ月分):2,000円前後
避妊率:服用し忘れを含めた一般的な使用における失敗率は8%
特徴的な効果:避妊、PMSの改善
副作用:吐き気・嘔吐、乳房痛、頭痛、下腹部痛、発疹、じん麻疹など
第二世代▶️アンジュ(3相性)
アンジュは、あすか製薬から発売されている低用量ピルです。
第二世代の3相性の薬で、飲み忘れることなく正しく服用していれば高い確率で避妊できるとされています。
名前:アンジュ
値段(1ヵ月分):2,000円前後
避妊率:飲み忘れを含めた一般的な使用における失敗率は9%
特徴的な効果:避妊
副作用:不正出血、乳房の痛み、頭痛、吐き気、気分不良、嘔吐など
第三世代▶️マーベロン(1相性)
マーベロンは、トリキュラーと同じく避妊だけでなくPMSの症状改善にも◎
月経困難症や過多月経といった生理にまつわるトラブルにも効果的な低用量ピルです。
黄体ホルモンや男性ホルモンを抑える働きがあるので、ニキビにも効くといわれていますよ。
日本製なのか海外製なのかを気にする方が多いようですが、特に成分の違いはありません。
海外製は28の取り扱いが少ないといわれています。
名前:マーベロン
値段(1ヵ月分):2,500円前後
避妊率:毎日正しく服用した場合は約99.9%
特徴的な効果:避妊、PMS改善、ニキビ改善、子宮内膜症の治療
副作用:不正出血、吐き気、嘔吐、頭痛、乳房の張りなど
第三世代▶️ファボワール(1相性)
マーベロンのジェネリック医薬品(後発医薬品)がファボワールです。
マーベロンと同じように男性ホルモンを抑制する効果がある低用量ピルなので、大人ニキビの改善にも役立ちますよ。
名前:ファボワール
値段(1ヵ月分):2,000円前後
避妊率:毎日正しく服用した場合は約99.9%
特徴的な効果:避妊、PMSの改善、大人ニキビの改善
副作用:不正出血、乳房の痛み、吐き気、嘔吐、頭痛、気分不良など
超低用量ピル種類一覧
超低用量ピルは、卵胞ホルモンの量をさらに少なくしたもので、月経困難症や月経前症候群などの改善薬として使用されることが多いです。
頭痛や腹痛など身体的な不調をはじめ、イライラや不安など精神的な症状の改善、予防をサポートしてくれます。
超低用量ピルの種類を比較して見ていきましょう。
第一世代▶️ルナベルULD(1相性)
ルナベルULDは、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤と呼ばれる超低用量ピル!
有効成分の黄体ホルモンと卵胞ホルモンの作用により卵胞が発育せず、排卵が抑えられ、月経時の痛みを軽減してくれます。
子宮内膜症などの月経困難症の治療に用いられたり、PMSや生理痛の緩和のために処方されたりすることが多いようです。
名前:ルナベルULD
値段(1ヵ月分):1,500円前後
避妊率:避妊目的では使用できません
特徴的な効果:月経困難症の改善
副作用:頭痛、吐き気、上腹部痛、不正性器出血、希発月経、過少月経、月経過多、むくみなど
第一世代▶️フリウェルULD(1相性)
フリウェルULDは、ルナベルULDのジェネリック医薬品(後発医薬品)です。
ルナベルULDと同じように、PMSや生理痛、子宮内膜症などの月経困難症の治療に用いられます。
名前:フリウェルULD
値段(1ヵ月分):1,000円前後
避妊率:避妊目的では使用できません
特徴的な効果:月経困難症の改善
副作用:頭痛、吐き気、上腹部痛、不正性器出血、希発月経、過少月経、月経過多、むくみなど
第二世代▶️ジェミーナ(1相性)
女性ホルモンを補充し、卵胞の成熟や排卵を抑えることができるジェミーナは、月経困難症や月経周期異常などの治療に適した超低用量ピルです。
名前:ジェミーナ
値段(1ヵ月分):2,000〜3,000円
避妊率:避妊目的では使用できません
特徴的な効果:月経困難症の改善
副作用:不正出血、頭痛、胸の痛み、息切れなど
第四世代▶️ヤーズ(1相性)
ヤーズは、子宮内膜症などの月経困難症や月経周期異常などを治療する薬です。
PMSや生理痛の改善にも効果的なところが◎
利尿作用を持つヤーズには、むくみにくいというメリットがあります。
名前:ヤーズ
値段(1ヵ月分):2,000円前後
避妊率:避妊目的では使用できません
特徴的な効果:月経困難症の改善
副作用:不正出血、腹痛、頭痛、吐き気など
第四世代▶️ヤーズフレックス(1相性)
ヤーズフレックスは、国内で初めて連続服用が可能となった超低用量ピルで、月経回数を減らすことができます。
ヤーズの特徴はそのまま兼ね備えているので、PMS、生理痛、子宮内膜症などの月経困難症の改善も期待できますよ。
名前:ヤーズフレックス
値段(1ヵ月分):2,500円前後
避妊率:避妊目的では使用できません
特徴的な効果:月経困難症の改善
副作用:性器出血、吐き気、頭痛など
副作用
低用量ピルには、避妊以外にもPMS、ニキビ、生理痛、生理不順、子宮内膜症の改善といった女性にとって嬉しい効果がいっぱい♡
服用してみたいという方も多いのではないでしょうか。
しかし、気になるのが副作用ですよね。
低用量ピルに身体が慣れていない最初の1〜2ヶ月ほどは副作用が出やすいといわれています。
不正出血や吐き気、頭痛、乳房の張りなどを感じるだけでなく、ひどい場合は静脈血栓症などの重い副作用が出ることもあります。
また、うつ病や高血圧、喘息などの治療薬と低用量ピルの飲み合わせによっては、副作用が強く出てしまうこともあるので、必ず医師と相談しましょう。
ジェネリック低用量ピル種類一覧
ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは、新薬と同じ有効成分を含む医薬品のこと♪
厚生労働省の認可を得て製造販売されます。
効果の同等性が認められているだけでなく、値段が安いのが特徴です。
<ジェネリック低用量ピル種類一覧>
- フリウェルLD/ULD
- ラベルフィーユ
- ファボワール
保険適用低用量ピル(LEP)&避妊用自費ピル(OC)種類一覧
保険適用低用量ピル(LEP)と避妊用自費ピル(OC)の違いについて見てみましょう。
基本的に、避妊用自費ピルは保険適用にはならず、全額自己負担の自費!
そのため医療機関によって料金に違いがあります。
一方、保険適用低用量ピルは、月経困難症や子宮内膜症の治療薬として用いられるので避妊用自費ピルとは区別され、保険が適用されます。
<保険適用低用量ピル(LEP)種類一覧>
- ルナベルLD/ULD
- フリエルLD/ULD
- ジェミーナ
- ヤーズ
- ヤーズフレックス
<避妊用自費ピル(OC)種類一覧>
- シンフェーズ
- トリキュラー
- ラベフィーユ
- アンジュ
- マーベロン
- ファボワール
おすすめの低用量ピル種類一覧▶︎ニキビ&肌荒れに効く
避妊をはじめ、月経困難症やPMS、生理痛の改善が期待できる低用量ピルは、ニキビや肌荒れに効くともいわれています。
軽いニキビであれば1ヶ月以内に治ることもあるようで、服用してから肌がきれいになったと感じる方も多くいるんですよ。
<ニキビに効く低用量ピル種類一覧>
- マーベロン
- ファボワール
おすすめの低用量ピル種類一覧▶︎太りにくい
マーベロンなどの低用量ピルを服用すると、太るという声もよく聞きますよね。
基本的に低用量ピルには体重を増加させる作用はないといわれています。
しかし、ピルに含まれる2種類のホルモンには体内に水分を溜めやすくする作用があることから、むくみの症状が出やすくなるよう!
そのため、むくみによって太ったと感じてしまうことがあります。
また、黄体ホルモンには食欲を増進させる作用があるので、一時的に体重が増加してしまうこともあります。
低用量ピルの作用には個人差があるので、服用してみてむくみや体重増加が気になるようであれば、医師に相談しながらより自分に合った低用量ピルを変えてもらうのもひとつの方法です。
中用量ピルとは?
中用量ピルは、低用量ピルと比較してホルモンが多く含まれているのが特徴的!
主に、月経困難症や生理不順の改善や不妊治療に使用されます。
中用量ピルは、ホルモン配合量が多いので、緊急避妊のアフターピルとして処方されることもあります。
また、中用量ピルは月経移動ピルともいわれています。
次の生理を早くしたり遅くしたりすることができるので、旅行や結婚式など生理避けたい大事なイベントがあるときにぜひ活用してみてください。
<中用量ピル種類一覧>
- プラノバール
クリニックできちんと診療してもらおう♡
低用量ピルの種類や効果、副作用などについてご紹介しました。
低用量ピルを服用してみて合わないと感じたときは、低用量ピルの種類変更をするのもひとつの方法ですよ。
初めてのときはもちろん、切り替えや種類を変えるときもクリニックできちんと診療してもらい、医師に相談しましょう。
※低用量ピル服用中の飲酒はOK!影響はないものの、アルコールの飲み過ぎにより正しい判断をできなくなる(性行為感染症などのリスクのある性行為をしてしまうなど)可能性があるので、飲みすぎには注意してください。
監修◆高橋しづこ(たかはししづこ)
産婦人科医
産婦人科専門医、臨床遺伝専門医、医療倫理学博士のライセンスを持ち、39歳で第1子、41歳で第2子、43歳で第3子を出産して3人の子をもつ母。 自身の高齢不妊や妊娠、出産の経験から、患者の心に寄り添うことをモットーとしている。
書籍『せかいがかぜをひいたから』オリジナル絵本サイト「YOMO」にて2020年8月公開
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