違和感のある空き家
私の実家の近くには、数軒並ぶ空き家がありました。
幼い頃、私はそのうちの一軒の空き家が怖くてたまらなかったのです。
実家とその空き家は目と鼻の先にあって、家の窓から空き家がよく見える位置にありました。
暇があると窓からよく外を眺めていたのですが、そのときに空き家も目に入るのです。
しかし、いつもなんとなくその空き家を眺めているうちに、違和感を覚えるようになりました。
一緒に並ぶ他の空き家と違い、その空き家だけ、いつも部屋の中が真っ暗なのです。
なにも見えない室内
真っ暗なその空き家は、家の窓から眺めているだけでは中がどのようになっているのか全くわかりません。
気になった私は、その空き家の前に行ってみることに。
目の前で見る空き家も、やはり真夜中のように真っ暗。
「どうしてこの空き家だけが真っ暗なんだろう?」と思った私はもう少し空き家に近付き、その暗い室内をガラス越しに覗き込みました。
そのときです。
「あれ……?」
真っ暗な部屋の中で、なにかがぼんやりと動いた気がしました。
その正体が気になった私は、窓に思い切り近付き、手をついて中を覗き込みます。
しかし、直後に私は悲鳴を上げることに。なぜなら……
窓ガラスを挟んだすぐそこに、真っ白な女性の顔が浮かんでいたのです。
いつから
「わあああぁあああ!」
私は大声を上げて、その場から走って立ち去りました。
女性は、いつからそこにいたのでしょうか。
私が窓を覗き込んだとき?はたまた空き家の前に来たとき?
「もしかしてずっと、あそこに……?」
私が家から空き家を眺めている間も、女性はいつもあそこから私のことを見ていたのでしょうか。
家に戻り、家族に「あの家は誰かが住んでいるの……?」と聞いてみましたが、もう随分前から誰も住んでいないといいます。
それどころか、イタズラ防止のために鍵がかけられていて、誰かが侵入することもできないようになっているのだとか。
私が見た、あの真っ白な顔の女性は一体……。
それ以降、あの空き家が見える窓から、外を眺めることはなくなりました。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆松木あや
ホラーやオカルトが好き。在住する東北の地で、ひんやりとした怖い話を収集しています。
恐怖体験の「おすそわけ」を楽しんでもらえると嬉しいです。
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