【ゾッとする怖い話】そこに“居た”。街を離れると決めた夜

Lifestyle

終電帰りの静かな夜道。
「いつもの道のはずなのに、何かがおかしい」——そんな感覚に陥ったことはありませんか?
安全なはずの家路で、声も出ないような恐怖体験に襲われたあの夜......。
次に体験するのは、あなたかもしれません。

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一人のはずの帰り道

暗い路地出典:stock.adobe.com

終電で帰宅し、いつもの裏路地を歩いていました。

大通りを避けた道は、住宅街の外れにある細長い小道。
両脇には古びたフェンスと工事中の建物がある、ごく普通の道です。

ところどころ欠けた街灯が、ぽつぽつと灯っています。
人通りはほとんどありません。
それが逆に心地よく、夜道も安心して歩けるこの街が気に入っていました。

アスファルトを踏む自分の足音だけが、一定のリズムで響きます。

(家まであと5分)
何度も通ったはずの道なのに、その夜だけは、不思議な感覚がありました。
背後の闇が妙に濃く感じられたのです。

増えていく足音と、重なる影

足音を響かせながら、少し歩調を早めます。
なんとなく後ろを振り返ろうとしましたが、その瞬間、体が硬直!

理由はわかりません。
ただ、背後に“見てはいけない何か”がいる感覚だけがあります。

――カツ、カツ、カツ。

それは自分の足音のはず。
しかし、リズムが少しずつずれていることに気づきます。

私が止まると、なぜか止まる。
歩き出すと、またついてくる。

どうやら、音はひとつではないようです……。

左右から、少し後方から。
複数の足音が、まるで追いかけるように響きます。

私は恐怖で背中が冷たくなり、さらにスピードを上げました!

それでも足音はどこまでもついてきます。
街灯に照らされたフェンスの反射に、自分の影が揺れている――
そう思い、ふと立ち止まりました。

私は三つの影を見ました。
恐怖を押し殺し「反射のせい」と自分に言い聞かせ、前だけを見て歩き続けました。

耳元で、優しい声が囁く

走り出したい衝動を必死にこらえながら、ポケットの鍵を強く握りしめます。
その感触だけが、やけにリアルでした。

「――振り返っちゃダメだよ」

耳元で、女の声が聞こえました。
優しげでありながら、どこか冷たく、背筋が凍るような声。
動けずにいると、もう一度ささやかれました。

「ダメ、急いで」

喉までこみ上げた悲鳴を飲み込み、私は無理やり足を動かしてマンションへ走り込みます。
扉に鍵を押し込んだ瞬間、“それ”の気配が、ぴたりと止まったのを感じました。

振り返らずに中へ滑り込み、ドアを勢いよく閉めます。
鍵をかけ、チェーンを引き、ようやく息を吐いて、その場にへたり込む私。

胸が締めつけられるように苦しくて、ドアの向こうは、静まり返っていました。
それでも、そこに“誰かが立っている”気配だけは、感じます。

そこに“居た”証拠

玄関の扉出典:stock.adobe.com

翌朝、玄関の外には泥のついた足跡がいくつも残されていました。

裸足のもの、革靴のようなもの、小さな子どもの足跡まで。
いずれも私の部屋を囲むように、四方からついていました。

あの夜以来、あの道は二度と通っていません。
遅くなる予定もすべて断っています。

次の春には、引っ越すつもりです。
あの優しくささやく女の声が、二度と聞こえない街へ。

※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

斎 透(さい とおる)

◆斎 透(さい とおる)

noteにて短編小説を執筆中の、犬と暮らすアラサー女子です。
やるせない夜にそっと寄り添うような文章をお届けしています。
幼い頃から、オカルト好きな母と叔母の影響で、不思議な話に夢中に。
「誰でも一つは、背中がひんやりする話を持っている」をモットーに、
ゾッとするけど、どこか温度のある物語を綴っています。
美容やキラキラした話題に疲れた夜、よければ一編、覗いてみてくださいね。
●note:https://note.com/sai_to_ru

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斎 透(さい とおる)

noteにて短編小説を執筆中の、犬と暮らすアラサー女子です。
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幼い頃から、オカルト好きな母と叔母の影響で、不思議な話に夢中に。
「誰でも一つは、背中がひんやりする話を持っている」をモットーに、
ゾッとするけど、どこか温度のある物語を綴っています。
美容やキラキラした話題に疲れた夜、よければ一編、覗いてみてくださいね。
●note:https://note.com/sai_to_ru