【ゾッとする怖い話】「なんで?じいちゃんはもう……」無人の車内でかかってきた不穏な着信

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なにげない日常に訪れた小さな異変。
出勤途中の女性が見たものは夢か、それとも……。

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底渦
底渦
2025.06.10

異変

あの朝、満員電車で運よく席に座れた私は、窮屈なシートの上でスマートフォンを眺めていました。

(なんだか目がぼやけるな……。夜更かししたせいかな?)

画面を顔に近づけたり遠ざけたりしながら、なんとか焦点を合わせようと試みますが、思うように文字が読めません。

(おかしいな?今までこんなことなかったのに……)

強く目をつむり、数回瞬きを繰り返したその直後。

ズキン。
頭が割れそうなほどの頭痛に襲われ、視界が真っ暗になったのです。

手からスマートフォンが滑り落ちていくのを感じ、私は意識を失ったようです。

無人の車内

無人の電車出典:stock.adobe.com

どれくらいの時間が経ったのでしょうか。

ふと顔をあげると、混雑していたはずの車内に人の姿は見当たりません。
頭上の蛍光灯には明かりが灯り、車窓を流れていくのは暗闇。

私は午前7時の電車に乗っていたはずなのに。

驚きのあまり立ち上がると、足の先にコツンとなにかがぶつかりました。
転がっていたのは自分のスマートフォン。

「そうだ……!私、頭が痛くなって……」

そのまま、うっかり寝過ごしてしまったのでしょう。

会社を無断欠勤してしまった。
恐怖に似た焦りが体中に広がり、慌ててスマートフォンを拾い上げます。

きっと上司からの着信履歴が山のように残っているだろう。
そう思った私の目に飛び込んできたのは、通知の来ていないロック画面と「圏外」の2文字。

「え?圏外!?そんなわけない……!」

私がいま乗っている電車は関東の中心部、それも地上を走っている路線です。
いつも通勤に使っていて、圏外になったことはありません。

とっさに通話履歴を開き、一番上に表示されていた友人へと電話を掛けます。
しかし、ツーツーと無情な音が響くばかり。

一体、いまどこにいるのだろう。
私は立ち上がり、ドアの方へと近寄りました。

暗闇

「あれ……?」
ドアの上に設置された電子表示板は真っ暗で、電車の行先も次の停車駅も書かれていません。

この電車は確かに動いているはず。
それなのに、車窓に街の景色が映ることはなく、どこまでも続く暗闇だけが通り過ぎていきます。

これはおかしい。
先ほどまでの焦りとは違う、真の恐怖が体を支配していきます。

私は、いてもたってもいられなくなり、人の姿を探そうと、揺れる車内を駆けだしました。

「いない、いない、いない……!」

どれだけ車両を移っても、人はいません。
あっという間に先頭車両にたどり着き、運転席に近寄った私は愕然としました。

この電車には、運転士すら乗っていませんでした……。

「うそ……」

なすすべもなく、その場にへたりこんだ私。
泣きそうになっていると、どこからかかすかな着信音が聞こえました。

リュックサック

スマホを操作する女性の手元出典:stock.adobe.com

ハッとしてうしろを振り向けば、いつのまにか座席の上にリュックサックがひとつ。
音はその荷物の中から聞こえてくるようです。

私は戸惑いながらも鞄を開け、着信を知らせる携帯電話を耳にあてました。

「もしもし、Yちゃんか?」

私の名前を呼ぶ声は、2年前に亡くなった祖父のもの。

「え……?そうだけど、なんで?じいちゃんはもう……」
「あんたはまだこっちに来たらいかんよ、はやく帰りなさい」

状況がつかめず、ぼんやりと目の前の鞄を見つめます。
それは、登山が趣味だった祖父が生前愛用していたリュックサック。

まともに会話もできないまま、ブチっと電話が切れると同時に、私の意識も途切れました。

……気が付くと、そこは病院のベッドの上でした。
どうやら私は通勤電車内で脳梗塞を起こし、緊急搬送されたようです。

きっとあの世に向かっていた私を祖父が連れ戻してくれたのでしょう。

あのとき、もし電話に出ていなかったら、私は……。
今、ここにこうしていられるのも祖父のおかげです。

※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

底渦

◆底渦

中学生で都市伝説にドハマりし、2chホラーと共に青春を駆け抜けたネット廃人系オカルトライター。

怖い話の収集・考察が趣味です。

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底渦

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