取り憑かれた友人
先日、大学時代の友人であるDから連絡がありました。
「久しぶり!突然なんだけどさ、お前って霊感あったよな?ちょっと聞いて欲しい話があるんだけど」
そんな切り出し方をするなんて、なにか困っているのかもしれない……。
僕は後日彼と会う約束をして、電話を切ったのです。
数日後、予約したレストランに現れたDは、思いのほか明るい表情をしていました。
しかしその背後には、この世のものとは思えない怪しい影がピタリとくっついて……。
その邪悪な雰囲気に我慢が出来ず、僕は店員に簡単な注文を告げたあと、早々に話を切り出しました。
「おい、D。やっぱりお前、悪いものに取り憑かれているぞ」
「ああ、そうだよな。でも、原因は分かってるんだ」
運ばれてきたビールに口をつけながら、Dはこんな話を始めたのです。
友人の話
それは1週間ほど前のこと。
地元に帰っていた彼は、中学時代の友人と共に夜遅くまで酒を飲んでいたそうです。
思い出話に花が咲き、いつしか話題は当時Dが恋心を抱いていた少女の話に。
「……実はその子、親父さんが借金を抱えていたせいか、中2のときに一家心中したんだよね」
自分と彼女は両思いだと感じていた中学時代のDは、しばらくの間学校に通うことができなくなったそう。
そんな過去の辛い記憶を思い出した彼は、ついつい酒を飲みすぎ、気づけば外は明るくなり始めていました。
無人の家
ようやく友人たちと別れたDは、ぼんやりとしながら、とある場所に向かいます。
そこは、あの日から時が止まったままの少女の自宅。
「酔ってたからかな。俺、どうしても家の中に入りたくなってさ。ドアとか窓を探ってみたら、ひとつだけ入れそうな所があったんだよ」
夜が明けたばかりの街に、人の姿はまだありません。
もうこんな機会はないかもしれない。
そう思ったDは、あたりを確認した後、少女の家へと忍び込んだそうです。
リビングの壁に掛けられたカレンダーは10年前の日付のまま。
ひと気のない部屋の中には、埃が厚く降り積もっています。
土足のまま探索を始めたDは、子供部屋として使われていたであろう部屋に入り、やがて見覚えのあるポーチを見つけました。
その中に入っていたのは、少女が使っていたヘアブラシやリップクリーム。
しかし、懐かしくそれらを眺めていたその時、家の外で誰かが歩く音が聞こえたのです。
通報されたらマズい……。
Dはポーチを手にしたまま、そっと少女の家を後にしました。
本当の姿
「……それから、風呂に入ってると誰かの気配を感じたり、夜中に家の中を歩き回る足音が聞こえたりするようになったんだ」
青ざめる僕のことなど、目に入っていないのでしょう。
Dは笑みを浮かべながら続けます。
「きっと、あの子が俺についてきてくれたんじゃないかな」
そう話した彼の背後には、ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべた“中年女性”がピタリと張り付いていました。
ブクブクと太った女性の黒ずんだ手は、Dの首を絞めあげていて……。
「あ、あのさ。お前に取り憑いているのは女の子じゃないよ。絶対にお祓いに行ったほうがいい!」
しかし、浮かれた彼にその言葉が届くことはなく、“ナニか”が取り憑いていることを確信したDは上機嫌で帰っていったのです。
……その後、何度か彼に連絡を入れたものの、返事は一度もありません。
独り暮らしのアパートにも、その姿はなく……。
あのとき、彼にもっと強く助言をしていれば。
友人を失った僕の胸には、今もそんな後悔が渦巻いています。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆底渦
中学生で都市伝説にドハマりし、2chホラーと共に青春を駆け抜けたネット廃人系オカルトライター。
怖い話の収集・考察が趣味です。
※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

