【ゾッとする怖い話】「お兄さんの部屋だけだと思いますよ、きれいになってるの」

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古い外観に似合わずきれいにリフォームされた部屋だった。
入居してすぐ、ベランダの隅に残された小さな餌皿と、どこからか聞こえる猫の鳴き声が気になりはじめるが……。

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味醂
2026.05.14

内見

古い賃貸アパート出典:www.google.com

「外は古いですけど、お部屋はリフォーム済できれいですよ」

たしかに室内は外観に似つかわしくないきれいさ。
つやつやしたフローリングと、バストイレ別なのが気に入った。

ベランダには前の住人のものらしい物干し竿がそのままになっていて、不動産屋いわく、「それもそのままお使いいただいて大丈夫ですよ」らしい。

「じゃあ、貰っちゃおうかな……ん?」

ベランダの隅の方にもう1つ置き土産を発見した。銀の小さな……動物の餌皿だろうか?

「ここってペット可でしたっけ?」
「いえ、ダメなはずですけど」

ということは、前の住人が秘密でなにか飼っていたか、ベランダに野良猫でも来るのかもしれない。

「1階のお部屋にも空きがあるんですがそっちはまだリフォームしてないので、こちらの201号室がおすすめですね。一応1階も見てみます?」
「ちなみに家賃って……?」
「1階の方がちょっとだけお安いです」

見せてほしいと言うと、101号室、先程の真下の部屋に案内された。
たしかにこれはまるで別の部屋だ。床はくすんでいるし、換気扇も古い。

「2階の方がいいですね」と言うと、不動産屋も「ですよね」と頷いた。

野良猫?

隣の部屋に引越しの挨拶に行くと同年代くらいの男が出てきて、「どうも」とタオルを受け取ると早々に引っ込んでいった。そっけないが、まあ、都会ならこんなものだろう。

部屋に戻って荷解きをしていると、外で猫の声がした。

やっぱりベランダに来る野良がいるのか。そう思って窓を開けてみたが、いない。
隣のベランダか?ついたて越しに覗き込んでみたが、なにも見えない。

ちょっと残念に思いながら部屋に戻った時だった。

「ギャッ!!!!」

すごい声がした。猫の悲鳴だ。
タオルを受け取ってすぐ引っ込んでいった、陰気そうな男の顔が浮かんだ。サンダルをつっかけて玄関を出て、隣の部屋の呼び鈴を押す。

「はい」

出てきた男は面倒そうに眉を寄せて、半開きのドア越しに僕に応対しようとした。

「あの……猫、こっちの部屋に来ましたよね?」
「はあ?」

ぞんざいな口ぶりに思わずかっとなって、「失礼します」と強引にドアを開けさせて部屋に踏み込む。

「あれ?」

「いないよ猫なんて」
「……この部屋、リフォームまだなんですか?」

床も壁紙も、玄関から入ってすぐのキッチンも、古びた1階の部屋と同じ作りだった。

「ああ……」

隣人はドアに凭れて少し考え込む仕草をして、僕に向き直る。

「お兄さんの部屋だけだと思いますよ、きれいになってるの」

リフォームの真相

ベランダ出典:stock.adobe.com

隣人いわく、201号室、つまり僕の部屋はいわゆる瑕疵物件というやつらしい。

「ここペット禁止なんだけど、ベランダで野良猫に餌やってた人がいたんだって。一人暮らしのおばあちゃん。猫が来るもんだから、いつもベランダの鍵かけてなくて」
「それで……ベランダから強盗に入られて、そのまま刺されたかなんかで亡くなっちゃったって」

“ガタン! バタン! ”

また大きな物音がした。……僕の部屋からだ。

「……猫缶とか供えたら、収まりませんかね」
「いや、死んだの猫じゃなくておばあちゃんだし……とりあえず、猫の声がしても窓開けない方がいっすよ。ふつうに危ないし」

“ガシャン! ”

また物音がした。隣人がびくりと肩を揺らしてベランダの方をふりむいた。

…………ベランダの鍵、閉めてきたっけ。

※この物語はフィクションです。
※この記事に使用している画像はイメージです。

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

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子どもの頃から怖い話が好きで、ホラー小説やネット怪談など、文章作品を中心に親しんできました。映像作品の痛そうな表現や急に驚かせる演出は少し苦手ですが、想像がふくらむ怖さや、日常の違和感が少しずつ不穏さを増していくような話に惹かれます。読んだあとふとした瞬間に思い出してしまうような“あとから効いてくる怖さ”を大切にしています。

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