誰もいない“はず”の家
最近、向かいの空き家から妙な音が聞こえることがあるんです。
私は実家で在宅ワークをしているので、家族の中では一番長く家にいます。
仕事中、ふと向かいから何かを動かすような音や、床を歩くような音が聞こえてくるんです。
でもあの家は長いこと空き家だし、古い建物なのですきま風か何かだろうと思っていました。
そんなある日の昼、いつものようにデスクに向かって作業をしていると、チカッと向かいの家の窓から白色の強い光が漏れました。
ほんの一瞬でしたが見間違いではありません。日が強い時間でも気付くほどの違和感でした。
「やっぱり、なんかおかしい……」
今なら証拠が見つかるかもしれないけど一人で確認するのは怖かったので、その日休みだった兄に事情を話して一緒に向かいの家まで行ってもらうことにしました。
見つかったものは
「何があるかわかんないからできるだけ遠くから、こっそり見るだけだぞ」
注意を促す兄の言葉に深く頷き、私たちは敷地には入らずに外から窓越しに中を覗き込みます。
よく目をこらしてみると、薄暗い室内にノートのようなものとカメラが落ちていました。
まるで、誰かが慌てて放り出したように床へ転がっています。
「これ、絶対誰かいるだろ」
これまでは面倒そうに着いてきていた兄も、さすがに真剣な表情になりました。
怖くなった私たちはそれ以上近づかず、すぐに家へ戻って空き家の大家へ連絡。
事情を説明し、あとは任せることにしました。
大家が明かす真相
数日後、空き家の大家から連絡がありました。
「まずは、誰かがあの家に勝手に入っていたことはほぼ間違いないです」
その不法侵入していた人物はまだ見つかっていないことも教えてくれました。
そして家の中を調べたところ、天井裏などから大量の写真が発見されたと言うんです。
「その……写真に映っていたのは、全部あなたのお兄さんだったんです」
「……え?」
通勤する兄。コンビニへ向かう兄。庭で洗車している兄。自室の窓辺に立っている兄。
大量の写真は、そんな何気ない兄の様子を盗撮したものしかなかったというのです。
身内なので普段は意識しませんが、兄は確かに顔立ちが整っていて、妙な人から好意を寄せられることも何度かありました。
しかし、今回は群を抜いて気色悪い。
不法侵入を犯してまで特定の人間を追い掛けるなんて、正気の沙汰ではありません。
何より恐ろしいのは、これだけの写真を撮った人物の正体が、今も見つかっていないことです。
あれ以来、兄は以前より周囲を警戒するようになりました。
私も仕事中、向かいの空き家のことが頭から離れません。
今はもう、物音も光もありません。
それでも犯人が今もどこかにいることを考えると、静かになったことを素直に喜ぶ気にはなれません。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆さしすせそそぎ
怪談や都市伝説、モキュメンタリー作品が好きで日頃からさまざまなホラーコンテンツに触れています。不気味な余韻が残る物語や「読まなければよかった」と思いながらも続きが気になってしまうような怖い話をお届けできればと思っています。
特に、人の悪意や心理が生み出す恐怖を描いた作品や読み終えたあとにもう一度振り返りたくなるような意味が分かると怖い話、ひんやりとした読後感が印象に残る物語が好きです。
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