物件写真
一人暮らしを始めるために、ネットで賃貸物件を探していたときの話です。
駅から近くて、家賃も予算内。
築年数は少し古かったですが、室内はリフォームされていて、かなり条件のいい部屋を見つけました。
掲載されている写真も多くて、リビング、キッチン、収納と順番に見ていったんですが、水回りの写真で手が止まりました。
トイレと洗面台、その隣にお風呂。
別に汚いわけでも、変なものが写っているわけでもありません。
でも、なんとなく気持ち悪いんです。
しばらく写真を見てから、もう一度間取り図の画像に戻しました。
「あれ?」
写真と間取りが、微妙に合っていない気がします。
間取り図ではトイレの奥は壁になっているはずなのに、写真だともう少し空間が続いているように見えます。
お風呂の位置も、写真の角度から考えるとおかしい。
条件は気に入っていたので、とりあえず内見を申し込みました。
内見
数日後、不動産会社の担当者と部屋を見に行きました。
実際の部屋は、ごく普通でした。
水回りも間取り図どおりです。
脱衣所にトイレがあって、奥にお風呂。
ネットで見たときの妙な感じはありません。
担当の方に、「サイトの水回りの写真って、別の部屋ですか?」と聞いてみました。
「え?」
スマホで物件ページを見せると、担当の方も写真をじっと見ていました。
「……なんか変ですね」
やっぱりそう見えるんだ、と思いました。
「これ、僕が撮った写真なんですよ」
部屋を掲載するとき、自分で撮影したことを覚えているそうです。
「こんなだったかなあ……?」
担当の方も首を傾げていました。
消えた写真
少し気味は悪かったんですが、部屋自体には問題がなかったので、その日は普通に帰りました。
結局その物件は契約せず、別の部屋に決めました。
しばらくして、ふと思い出して物件ページを開いてみたんです。
例の写真はなくなっていました。
物件はまだ空室として掲載されていますが、水回りだけ、別の写真に差し替えられていました。
新しい写真を見ると、内見したときと同じ普通の間取りです。
やっぱり何かおかしかったんだろうなと思いました。
写っていたもの
……私、最初の写真をスマホに保存していたんです。
友達に「この写真、何かおかしいよね?」と見せるために、とっておいたんですよ。
久しぶりに、その画像を開きました。
前に見たときより、より強い違和感があったんです。
トイレの奥です。
壁だと思っていたところに、細い隙間がありました。
その向こうにも床が続いています。
拡大してみると、隙間というより、細い通路のように見えました。
その先は暗くてよく見えません。
そんな場所、実際の部屋にはありませんでした。
最初から写っていたのに私が気づかなかっただけかもしれません。
そう思って、以前その写真を送った友達とのメッセージを探しました。
友達から返ってきていたのは、「たしかに変な間取りだね」という一言だけ。
その下に、私が送った写真が残っていたので、開いてみました。
その写真には、通路なんてありませんでした。
私が保存していた写真にだけ、トイレの奥に細い通路が写っていたのです。
怖くて、画像は消してしまいました。
※この物語はフィクションです。
※この記事に使用している画像はイメージです。

◆味醂
子どもの頃から怖い話が好きで、ホラー小説やネット怪談など、文章作品を中心に親しんできました。
映像作品の痛そうな表現や急に驚かせる演出は少し苦手ですが、想像がふくらむ怖さや、日常の違和感が少しずつ不穏さを増していくような話に惹かれます。
読んだあとふとした瞬間に思い出してしまうような“あとから効いてくる怖さ”を大切にしています。
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