妹の付き添い
最近、毎晩のように妹に起こされます。
「お姉ちゃん、トイレついてきて」
時間は決まって深夜2時頃。
大学に通いながら夜はバイトもしている私にとっては、正直かなり迷惑な話です。
とはいえ、怖がっている妹を一人で行かせるほど薄情でもありません。
「はいはい、わかったよ」
仕方なくベッドから起き上がり、廊下の電気をつけて一緒にトイレへ向かうのが最近の日課になりつつありました。
改めて夜中の廊下を歩いてみると、昼間とは雰囲気がまるで違います。
薄暗いうえに物音もなく、子どもなら怖がるのも仕方ないのかもしれません。
ただ、どうして最近になって突然怖がるようになったのかは気になっていました。
なのである夜、トイレの外で妹を待ちながら尋ねることに。
「最近、なんか怖いテレビでも見たの?それともそういう動画とか?」
「お姉さんは、気付いてくれないの?」
「……何を?」
返事になっていない返事をされて思わず聞き返しましたが、それ以上妹は何も答えませんでした。
翌朝、妹の話をすると……
翌朝。
母が作ってくれた朝食を食べながら妹のことを話しました。
「最近さ、毎晩妹に起こされるんだけど。そういう怖いものの特集みたいなのやってた?」
私の言葉を聞いた瞬間、食器を洗うために流していた水の音に負けないぐらいに大きな声で母は笑います。
「あんた、まだ寝ぼけてるの?もう学校行く時間なんだから顔洗ってきなよ」
「いや、だから妹が……」
「あんたに妹はいないでしょ。一人っ子じゃん」
一瞬、何を言われたのかわかりませんでした。
しかし、思い返してみればその通りです。
私は一人っ子。 妹なんて最初からいません。
じゃあ、毎晩一緒に廊下を歩いていたあの子は?
なんで私はあの子を何の疑問も持たずに妹だと思ったの?
急に怖くなり、一度落ち着こうと自室へ戻るため廊下に出ました。
似ている
そのとき、昔から廊下に飾られている和服姿の女の子の人形が目に入ります。
私が物心着いた頃から家にあるものなので、髪は乱れて着物の一部もほつれていました。
何気なくその顔を見て、足が止まります。
“似ている”
毎晩私を起こしに来ていた「妹」に、どことなく似ていたのだ。
その日は気味の悪さを抱えたまま大学へ向かいましたが、帰りに手芸店へ寄り、布や糸を買って帰りました。
もし本当に、この人形に関係する何かだったのなら、壊れたままなのが嫌だったのかもしれない。
そう考え、素人なりにほつれた着物を直してやりました。
その日の夜から、「妹」は私を起こしに来なくなりました。
……もしかするとあの子は、怖くて私についてきてほしかったのではなく、ずっと自分に気付いてほしかっただけなのかもしれません。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆さしすせそそぎ
怪談や都市伝説、モキュメンタリー作品が好きで日頃からさまざまなホラーコンテンツに触れています。不気味な余韻が残る物語や「読まなければよかった」と思いながらも続きが気になってしまうような怖い話をお届けできればと思っています。
特に、人の悪意や心理が生み出す恐怖を描いた作品や読み終えたあとにもう一度振り返りたくなるような意味が分かると怖い話、ひんやりとした読後感が印象に残る物語が好きです。
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