モーニングコール
急な出張が決まり、駅近くの古いビジネスホテルに泊まることになりました。
直前の予約だったこともあり、空いていたのはかなり狭い部屋。
建物も設備も古く、高校の修学旅行以来利用したことがないような、かなり残念なホテルでした。
当然、サービスもお世辞にも良いとはいえません。
その日は5時起きだったので、念のためフロントにモーニングコールをお願いしました。
ところが朝、電話が鳴って時計を見ると4時。
「お時間です」
機械的な声が聞こえて、そのまま電話は切れました。
1時間も早く叩き起されたことに腹が立ってしまい、結局そこから寝直すこともできずに仕事へ。
「まだそこに……」
その日は取引先でのクレーム対応まであり、ホテルへ戻った頃にはクタクタでした。
翌朝は7時起きと余裕こそありますが、疲労はマックス。
朝のことがあったので少し迷いましたが、念のためもう一度モーニングコールを頼みました。
シャワーを浴びると、疲れのせいかすぐに眠ってしまったんです。
そして、電話の音で目が覚めました。
時計を見ると、また4時。
「お時間です」
「なんなのよ、もう……!」
フロントに文句を言ってやるという怒りがありましたが眠気に抗うことはできず、10分ぐらい早く出ればいいか……なんて考えながら二度寝をしました。
ところが30分後。
また電話が鳴ったんです。
もうさすがに我慢できず、受話器を取るなり怒鳴りました。
「何回かけてくるんですか!?」
少しの沈黙の後、女性の声がしました。
「……まだ、そこにいらっしゃるんですか?」
言っている意味が分からず、私はフロントまで直接文句を言いに行きました。
事情を話すと、従業員は困惑した様子で履歴を確認します。
そして、妙なことを言い出すんです。
「お客さま、今朝はまだモーニングコールをしておりません……」
さらに、このホテルでは従業員が直接電話をかけて起こす方式で、「お時間です」という自動音声は使っていないとのこと。
その話を聞いていると、いきなり火災報知器が鳴り響きました。
どうやら私が泊まっていた階で古い配線から火が出たというんです。
幸い利用客が少ないホテルだったこともあり、宿泊客は全員避難できました。
ただ、あとで従業員から聞いた話は今でも忘れられません。
数年前にも、同じ階で深夜に小さな火災があったそうです。
……そのとき、ひとりだけ逃げ遅れた宿泊客がいたのだとか。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆さしすせそそぎ
怪談や都市伝説、モキュメンタリー作品が好きで日頃からさまざまなホラーコンテンツに触れています。不気味な余韻が残る物語や「読まなければよかった」と思いながらも続きが気になってしまうような怖い話をお届けできればと思っています。
特に、人の悪意や心理が生み出す恐怖を描いた作品や読み終えたあとにもう一度振り返りたくなるような意味が分かると怖い話、ひんやりとした読後感が印象に残る物語が好きです。
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