飲み会の帰り
大学生の頃の話です。
地元の友だち数人と駅前で飲んで、帰りが遅くなったことがありました。
家は駅から歩いて20分くらい。
バスも終わっていたので、歩いて帰ることにしました。
住宅街に入るところで、同じ飲み会に来ていた友人が、「そっち暗いじゃん。途中まで送るよ」と言ってついてきてくれました。
そいつの家は反対方向だったので断ったんですが、「酔い覚まし」と言って聞きません。
結局自分が折れて、2人でくだらない話をしながら歩きました。
高校の頃の話とか、今日来ていた友だちの近況とか。
途中、街灯の少ない細い道に入ったとき、「このへん、夜こんな暗かったっけ」なんて話したのも覚えています。
家まであと数分というところで、「もうここでいいよ」と言って別れました。
「じゃあな」
そう言って、友人は来た道を戻っていきました。
欠席
家に着いて風呂に入ってから、送ってくれた友人に、「今日はありがと。ちゃんと帰れた?」とメッセージを送りました。
すぐに既読がついたんですが、しばらくしてなぜか電話がかかってきたんです。
「どうしたの?今日なんかあった?」
「え?帰り送ってくれたじゃん」
少し間がありました。
「今日、俺行ってないけど」
酔ってふざけているんだと思いました。
「いやいや、さっきまで一緒にいたじゃん」
「だから今日の飲み、俺行ってないって。バイトだったし」
言われて、急に自信がなくなりました。
慌ててその日撮った写真を確認しました。
集合写真。
友だち同士で撮った写真。
何枚見ても、そいつは写っていません。
グループのメッセージを遡ると、昼間に本人から、「今日バイトで行けんわ」と送られてきていました。
あれは誰だったんでしょう
電話を切ったあと、さっきまでのことを何度も思い返しました。
顔も声も、間違いなくその友人だったんです。
昔の話だってしました。
本人しか知らないようなことも普通に話していましたし。
ただ、一つだけ。
思い返してみると、おかしかったんです。
住宅街に入ってから、一度も友人の顔をちゃんと見ていなかったんです。
ずっと自分の少し後ろを歩いていて、声も背中の方から聞こえていました。
急に怖くなって、カーテンの隙間から外を見ました。
別れた場所が、家の前の道から少しだけ見えます。
街灯の下に、誰かが立っていました。
遠くて顔までは見えません。
カーテンを閉めて、それ以上は確認しませんでした。
あの日、私を家まで送ってくれたのが誰だったんでしょう。
※この物語はフィクションです。
※この記事に使用している画像はイメージです。

◆味醂
子どもの頃から怖い話が好きで、ホラー小説やネット怪談など、文章作品を中心に親しんできました。
映像作品の痛そうな表現や急に驚かせる演出は少し苦手ですが、想像がふくらむ怖さや、日常の違和感が少しずつ不穏さを増していくような話に惹かれます。
読んだあとふとした瞬間に思い出してしまうような“あとから効いてくる怖さ”を大切にしています。
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