和室の窓だけ
就職を機に一人暮らしを始めることになりました。
引っ越し当日、私ははしゃいでいたのかもしれませんね。
まだ家具を運び入れる前の部屋を記念に残しておこうと思い、スマホで何枚か写真を撮ったんです。
そのうちの一枚を確認して、違和感を覚えました。
和室の窓の外が、何故か真っ暗なんです。
撮影したのは昼間。
当然なことながら肉眼では窓から青空が見えています。
意味がわからず、何度撮ってみてもその窓だけ夜のように真っ暗に写ります。
他の窓や、玄関を開けて外を撮影しても異常はありません。
気味が悪くなりましたが、わからないまま放っておくのはもっと嫌でした。
その日、何かわかることがないだろうかと夜中まで何度もその窓を撮影していたんです。
でも、夜に撮れば窓の外は暗いまま。昼でも夜、夜でも夜。
見たり触ったり、とにかくその窓を全力で調べてみましたが写真での異変以外に変わったところはありません。
うっすら写っていたのは
翌日、撮り溜めた写真を見返していると、私は妙なことに気づきました。
窓ガラスに、うっすら人影が写っているんです。
最初はスマホのライトで自分が写り込んだのだと思っていました。
でも、着ている服が違う。
慌てて他の写真も確認しました。
同じ人影が、すべての写真にいました。
しかも偶然の映り込みではありません。
ある写真では手を振り、別の写真では私を指さしています。
まるで写真に写っていることを理解した上で、自分の存在を必死にアピールしているようでした。
「何これ……」
そう呟きながら最後の一枚を開き、思わず息を忘れて一点を凝視しました。
……人影が、包丁を構えている。
その日は新居に泊まらず、荷物もそのままにして実家へ帰りました。
あの影の正体
後日、こんな話をしても真面目に取り合って貰えないだろうと思い、大家さんに怪奇現象については伏せたまま以前この部屋で何かなかったか尋ねました。
最近、父親から物件管理を引き継いだという大家が調べてくれた結果、後日大慌てで謝罪されました。
以前この部屋に住んでいた人物が、複数人を殺害する事件を起こしていたそうです。
しかも、殺害が行われたのは必ず深夜。
同じ部屋の中だったのだとか。
……引き継ぎの際、その情報が抜け落ちていたそうです。
大家さんがあまりにも申し訳なさそうなのと、物件探しの時から非常に良くしてくださっていた方だったので、諸々のお金を返金していただき、引越し費用を負担してもらうことでその件は折り合いを付けました。
今は、実家で母の小言を聞きながら改めて新たな新居を探している最中です。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆さしすせそそぎ
怪談や都市伝説、モキュメンタリー作品が好きで日頃からさまざまなホラーコンテンツに触れています。不気味な余韻が残る物語や「読まなければよかった」と思いながらも続きが気になってしまうような怖い話をお届けできればと思っています。
特に、人の悪意や心理が生み出す恐怖を描いた作品や読み終えたあとにもう一度振り返りたくなるような意味が分かると怖い話、ひんやりとした読後感が印象に残る物語が好きです。
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