些細な違和感
この部屋に引っ越してきたのは2ヶ月ほど前です。
築年数はそれなりですが駅から近いわりに家賃が安く、内見したときも特に気になるところはありませんでした。
大家さんも穏やかな人で、何か困ったことがあればいつでも連絡してくださいと声をかけてくれました。
ところがある日、異変が起きたんです。
仕事から帰ると閉めたはずの窓が少し開いていたり、机の上のリモコンの位置が変わっていたりするのです。
しかし、自分がガサツな性格だったこともあり、勘違いだろうと思いながら普通に暮らしていました。
核心的な出来事
勘違いではないとわかったのは、つい先日のことです。
帰宅すると畳んで置いていた布団が広げられていました。
さすがにこれはおかしいと思い、外出中の部屋を確認できるよう、ペットカメラを購入して設置しました。
数日後、その映像に信じられないものが残っていました。
昼過ぎ、大家さんが何事もなかったかのように玄関の扉を開けて入ってきたのです。
大家さんは部屋を物色するでもなく、まっすぐ和室へ向かいました。
そうして布団を広げると当たり前のようにそこに寝そべり、2時間ほど昼寝をしたら出ていきました。
後日問い詰めると大家さんは悪びれもせずに、
「ちょっと休ませてもらっただけですよ」
と言いました。
「ありえない。こんなことをするなんて、異常です!」
混乱で上手くまとまらない思考の中、必死にその旨を伝えると、大家さんは不思議そうな顔をします。
「前の人のときから、ここで休ませてもらってるから」
当然のように告げられた言葉に怖くなり、すぐに引っ越しを決めました。
母からの連絡
とはいえ、今日明日で新しい部屋を見つけて出ていくこともできません。
私だけ別の場所に泊まっても、その間に家のものを好き勝手に触られると思うと、恐ろしくて仕方ありません。
実家の母に相談し、私が仕事で不在の間だけ部屋にいてもらうことにしました。
大家さんが合鍵を持っている以上、母には必ず内側からチェーンをかけてもらっています。
先日、仕事中に母からメールがありました。
「今日も来たよ」
大家さんが合鍵で玄関を開けようとしたそうです。
当然、チェーンがかかっているので、扉は少ししか開きません。
すると、何度かガンガンと乱暴に扉を鳴らし、そのまま何も言わず帰っていったとか。
「本当に怖いんだけど。あの人、何しに来てるの?」
母にそう聞かれましたが、私にもわかりません。
現在、大急ぎで新しい引っ越し先を探しています。
1日でも早く、この部屋から出ていくしかありません。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆さしすせそそぎ
怪談や都市伝説、モキュメンタリー作品が好きで日頃からさまざまなホラーコンテンツに触れています。不気味な余韻が残る物語や「読まなければよかった」と思いながらも続きが気になってしまうような怖い話をお届けできればと思っています。
特に、人の悪意や心理が生み出す恐怖を描いた作品や読み終えたあとにもう一度振り返りたくなるような意味が分かると怖い話、ひんやりとした読後感が印象に残る物語が好きです。
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