空き家の怪奇現象
私の地元には、何年も前から放置されている古い空き家があります。
目立つ立地にあったので、子どもの待ち合わせ場所に使われたりと、地域に馴染みのある場所でした。
しかし、老朽化が進み、瓦や外壁が落ちる危険もあったため、とうとう取り壊されることになりました。
ところが、なかなか工事が始まりません。
最初に依頼された業者が現地調査のあとに辞退し、別の業者も同じように断ったそうです。
理由は、家の中で起こる怪奇現象。
2階の一室に入ると、突然ドアが閉まる、誰もいないのに話し声がする、部屋の隅に人影が立っているなど、さまざまな異変が。
業者によって体験したことは異なりましたが、皆その部屋に入った途端に異変に遭遇したといいます。
空き家は親戚の所有物だったので話を聞いてみると、親戚も実はそうした怪奇現象に遭遇したことがあるとのこと。
ただ、不思議なことに私だけは一度も経験したことがありません。
以前に何度か片付けの手伝いを頼まれて中に入り、例の部屋にも足を踏み入れたことがありますが、何も起こりませんでした。
「……確かに、○○ちゃんがいるときは静かね」
怪奇現象にまるで心当たりがないと話す私に、親戚が深刻そうにそう呟いたのが印象に残っています。
解体当日
やがて、私が立ち会うことを条件に引き受けてくれる業者が見つかり、ようやく解体の日を迎えました。
ところが当日。
私は渋滞に巻き込まれ、到着が1時間ほど遅れてしまったのです。
現場に着くと、作業はまったく始まっていませんでした。
数人の作業員が家から離れた場所に集まり、明らかに怯えた様子でこちらを見ています。
「遅れてすみません。何かありました?」
そう尋ねると、1人が青ざめた顔で答えました。
私の到着を待ったほうが良いだろうと思い、誰も例の部屋には入っていなかったそうです。
それなのに私が到着する予定の時間を過ぎた頃、2階から何かを激しく叩くような音が響き始め、窓が揺れ、玄関の内側から何度もドアを叩かれたというのです。
怖くなって全員が家から離れると、今度はどこからともなく声が聞こえたとのこと。
そのとき、全員が同じ言葉を聞いていました。
「まだ来ないの?」
私が到着すると怪奇現象はぴたりと止まりました。
そのあと、予定通り作業が進みましたが、私はずっと落ち着きませんでした。
これまで私は、あの家で一度も怖い目に遭ったことがありません。
だから自分には関係ないと思っていました。
でも、違ったのかもしれません。
あの部屋にいる何かは、私が来るのを毎回楽しみに待っていた。
そう考えると、今まで何もなかったことのほうが、今はずっと怖いです。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆さしすせそそぎ
怪談や都市伝説、モキュメンタリー作品が好きで日頃からさまざまなホラーコンテンツに触れています。不気味な余韻が残る物語や「読まなければよかった」と思いながらも続きが気になってしまうような怖い話をお届けできればと思っています。
特に、人の悪意や心理が生み出す恐怖を描いた作品や読み終えたあとにもう一度振り返りたくなるような意味が分かると怖い話、ひんやりとした読後感が印象に残る物語が好きです。
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