夕方の公園
家の近くに小さな公園がありました。
すべり台とブランコ、それから青いジャングルジムがある、ごく普通の公園です。
放課後は友達とよくそこで遊んでいました。
でも、その日は友達が先に帰ってしまい、私だけが公園に残っていたんです。
ぼうっとジャングルジムの影を眺めていると、ふと違和感を覚えました。
影
地面に伸びたジャングルジムの影に重なるように、小さな子どもの影があったんです。
丸い頭に、両腕を横に広げたような形でした。
誰かがジャングルジムに登ってる?
そう思って顔を上げました。
誰もいません。
周りにも、私以外の子どもはいませんでした。
もう一度地面を見ると、やっぱり子どもの影があります。
その影が、こちらに手を振っているみたいな動きをしました。
私は不思議に思いながらも、なんとなく手を振り返したんです。
変だなと思いましたが、家に帰る頃には忘れてしまいました。
縮む
翌日、また友達と公園へ行きました。
昨日のことを話すと、友達は面白がってジャングルジムの周りを走り回りました。
でも、変な影はどこにもありません。
友達は「つまんないの〜」と言いましたが、私は少しほっとしたんです。
結局、いつもどおり二人で遊びました。
ところが、帰り道で妙なことに気づいたんです。
影が、いつもより短い気がする。
次の日も、その次の日も同じでした。
友達の影は長く伸びているのに、私の影だけが短いんです。
「ねえ、なんか影、変じゃない?」
とうとう、私の影は友達の影の膝あたりまでしか伸びなくなってしまいました。
頭も腕もあるのに、全体がぎゅっと縮んだような形でした。
返して
次の日の夕方、私は一人で公園へ行きました。
ジャングルジムの影は、いつものように地面に長く伸びています。
そして、その中に、あの子どもの影がありました。
今度は、はっきりとわかりました。
小さな子どもの影が、ジャングルジムの影の中に立っています。
私は思い切って、影に向かって言いました。
「私の影、返してよ」
すると、子どもの影がゆっくり動きました。
しゃがみ込むように形を変え、何かを拾い上げる仕草をしたんです。
次の瞬間、私の足元から影がすっと伸びました。
元の長さに戻ったんです。
今思えば、あれは紛れもない恐怖体験でした。
ほっとした私は、そのまま家に帰りました。
それからは、自分の影がおかしくなることもありませんでした。
ただ、一度だけ気になることがありました。
数日後、友達とあの公園の前を通ったときです。
ジャングルジムの影の中に、あの小さな子どもの影がありました。
その隣に、もうひとつ、背の高い影が立っていたんです。
その影は、私と同じくらいの背丈に見えました。
ふたつの影は、手をつないでいるように見えます。
あの日、私に返された影は、本当に私のものだったんでしょうか。
※この物語はフィクションです。
※この記事に使用している画像はイメージです。

◆味醂
子どもの頃から怖い話が好きで、ホラー小説やネット怪談など、文章作品を中心に親しんできました。
映像作品の痛そうな表現や急に驚かせる演出は少し苦手ですが、想像がふくらむ怖さや、日常の違和感が少しずつ不穏さを増していくような話に惹かれます。
読んだあとふとした瞬間に思い出してしまうような“あとから効いてくる怖さ”を大切にしています。
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