聞こえないはずの踏切の警報音
昔から、不思議な音が聞こえることがありました。
踏切の警報音です。
“カンカンカン、カンカンカン”
電車が来るときに鳴るその音が、何事もないときにも聞こえることがあるのです。
初めて気づいたのは、小学生の頃でした。
通学路にある踏切を渡ろうとしたとき、突然けたたましい警報音が聞こえたのです。
ところが、遮断機は下りません。
電車が近づいてくる様子もありませんでした。
一緒にいた友人に尋ねても、「何も聞こえないよ?」と不思議そうな顔をされるだけ。
それ以来、同じ踏切で何度か似たようなことがありました。
最初は耳がおかしくなったのかと思いましたが、音が聞こえるのは決まってその踏切の近くだけです。
大人になってからも、その現象は続いていました。
原因は分かりません。
ただ、あの音が聞こえると妙に胸騒ぎがするので、警報音が止むまでは踏切を渡らないようにしていました。
警報音を無視した結果……
ある日の朝、私は寝坊してしまい、駅へ向かって急いでいました。
いつもの踏切に差しかかったとき、またあの音が聞こえたのです。
“カンカンカン、カンカンカン”
遮断機は上がったままで、周囲の人たちも普通に歩いています。
普段なら立ち止まるところですが、その日は電車に乗り遅れそうだったため、踏切に足を踏み入れようとしました。
その瞬間。
「危ない!!」
耳元で、男の人が怒鳴る声がしました。
同時に、正面から肩をものすごい力で突き飛ばされたのです。
私は後ろによろめき、踏切の手前に倒れ込みました。
何が起きたのか分からず、顔を上げた直後。
目の前で起きた異変
“ゴオオオッ!!”
目の前を巨大な何かが通り過ぎたかのように、激しい突風が吹き荒れました。
髪が乱れ、服が激しくはためきます。
地面まで震えたような気がしました。
けれど、そこには何もありません。
電車が通過したわけでもなく、遮断機は上がったままです。
周囲の人たちは、突然転んだ私を不思議そうに見ていました。
あれほど激しい風が吹いたというのに、誰も驚いていないのです。
呆然としていると、少し離れたところから声が聞こえました。
「ちゃんとよく聞けよ、バカ!」
先ほどと同じ男の人の声です。
その後も小言が続いていましたが、次第に遠ざかり、やがて聞こえなくなりました。
気づけば、あの踏切の警報音も止まっています。
私はしばらく動けませんでした。
もし、あのとき誰かが突き飛ばしてくれなかったら。
目には見えなかったあの巨大な何かに巻き込まれ、私はどうなっていたのでしょうか。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆さしすせそそぎ
怪談や都市伝説、モキュメンタリー作品が好きで日頃からさまざまなホラーコンテンツに触れています。不気味な余韻が残る物語や「読まなければよかった」と思いながらも続きが気になってしまうような怖い話をお届けできればと思っています。
特に、人の悪意や心理が生み出す恐怖を描いた作品や読み終えたあとにもう一度振り返りたくなるような意味が分かると怖い話、ひんやりとした読後感が印象に残る物語が好きです。
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