卵子凍結

卵子凍結ってなに?メリットやデメリット、何歳からやるべきか専門医が解説

Lifestyle

芸能人が実施を発表するなど、最近耳にすることが増えた「卵子凍結」。東京都では、昨年から「社会的卵子凍結」に対する助成が開始されました。
「卵子凍結って誰のためのもの?」「何歳から始めるのが良いの?リスクはある?」など、さまざまな疑問について、長年卵子凍結に携わっている専門医が解説します。

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監修者
船曳美也子
  • 産婦人科専門医・生殖医療専門医
  • 船曳美也子

神戸大学文学部心理学科、兵庫医科大学卒業。兵庫医科大学、西宮中央市民病院、
パルモア病院を経て医療法人オーク会へ。エジンバラ大学で未成熟卵の培養法などを学んだ技術と自らの不妊体験を生かし、診療にあたる。また、早くから不妊と肥満の関係性に着目し、2ヶ月で14kg の減量に成功した患者様の排卵障害が改善したことから、ダイエット・プログラムを発案。国内外の学会発表多数あり。

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卵子凍結をすることの意味って何?

顕微鏡で見たときの顕微授精の様子。卵子に精子を注入する

卵子凍結とは、将来の妊娠・出産のために卵子を凍結保存することです。

卵子凍結には『医学的卵子凍結』と『社会的卵子凍結』があり、『医学的卵子凍結』は病気の治療等で卵巣機能が低下する可能性がある場合に行われます。
『社会的卵子凍結』は、仕事や介護などで今すぐの妊娠を望まない方を対象に行われる卵子凍結です。

卵子は加齢とともに染色体異常が起きやすくなり、いわゆる「老化」をすることが分かっています。
女性の社会進出や晩婚化が進む現在、将来の妊娠・出産を考える女性にとっては、若いときの卵子を取っておくことも選択肢の一つです。

ここでは『社会的卵子凍結』について解説します。

何歳から始めるのが良い?

砂時計と働く女性出典:www.shutterstock.com

「卵子は老化する。だからこそ、妊娠や出産を考えているのであれば、なるべく若い時の卵子を採っておくと良い」という考え方が、卵子凍結が行われるようになった背景にあるようです。

卵子凍結を行う年齢についてはどうでしょうか。
妊娠・出産を考える年齢は人によって異なるため、「何歳から」という基準はないとのこと。

ただ、これまでの研究では、35歳を過ぎると妊娠率が急激に低下することが分かっています。
そのため、将来妊娠を考えているのであれば、早い段階での実施がおすすめ

実際、監修医の船曳先生がいる医療法人オーク会では30歳台を中心に、20歳台〜40歳台と幅広い年齢の方が実施しているそうです。

メリットとデメリット

仕事と人生のバランス出典:www.shutterstock.com

いざ卵子凍結を考えたとき、身体や費用の負担など、さまざまな不安が出てきますよね。
具体的なメリットとデメリットをお伝えします。

 考えられるメリット

人生プランの選択肢が広がる

メリットとして挙げられるのは、人生プランを立てやすくなること。

クリニックには「妊娠・出産を希望しているけれど、今は勉強や仕事に時間を費やしたい」「パートナーはいるけれど、2人で相談した結果、数年後にお子さまを望んでいる」などさまざまな状況の方が来院されているそうです。

人生プランの中に「卵子凍結」という選択肢があることで、人生のポイントと妊娠・出産のタイミングを考えるときの一つの指標になると考えられます。

「凍結したこと」が安心につながる

若い時期の卵子を凍結して持っておくことで、数年後に妊娠の確率を高めることができます。
また、「凍結している」という状態が安心材料になるという声もあります。

 考えられるデメリット

「卵巣過剰刺激症候群」を起こす可能性が高くなる

デメリットは、採卵して2週間は卵巣が腫れてしまう「卵巣過剰刺激症候群」が起きるケースがあることです。

ただし、この症候群は予防的な措置を行うことで、症状を最小限に抑えることができます。

費用がかかる

卵子凍結は自費で行う処置です。
凍結個数や凍結の期間によってかかる費用が異なり、クリニックによっても異なります。

ご自身で何年後に妊娠を望むのか、どのくらいの期間凍結をしておくのかなど、費用面も合わせてスケジュールを考えておく必要があります。

心配なときは、医師に相談してみましょう。

どれくらいの費用がかかる?

卵子凍結はどのくらい費用がかかる?

いざ「卵子凍結をしたい」と考えたとき、気になるのは費用ですよね。
卵子凍結は保険適用ではないため、基本的に自費で行われます
そのため、費用はクリニックによって異なります。

【卵子10個を凍結する場合にかかる費用(参考)】

  • 排卵誘発〜卵子凍結まで:約¥36万(税抜)
  • 1年間の凍結保存費用:約¥9万(税抜)
  • 2年間の凍結保存費用:約¥16.5万(税抜)

※医療法人オーク会で10個の卵子を凍結した場合の参考費用です。
※凍結する卵子の数については医師と相談して決めましょう。
※平均の採卵数が10個前後のため上記では10個を例にしていますが、採卵できる数は人によって異なります。

クリニックによっては、事前説明会を行っているところもあります。
気になる方は参加してみるのも良いでしょう。

助成の動きも

国内では、社会的卵子凍結実施に向けた費用助成の動きが出てきています。

東京都は2023年10月から、都内在住の19〜39歳の女性を対象に費用助成を始めました。
大きな反響を呼び、事前説明会には予想の5倍ほどが参加。
助成拡大が検討されているとのことです。

東京都以外でも山梨県が助成を検討するなど、自治体による費用助成の動きは今後も拡大していくことが予想されます。

また、近年では福利厚生として、卵子凍結の補助をする企業も増えているようです。

痛みはある?

子宮のアイコン出典:www.shutterstock.com

卵子凍結を行う処置のなかでは「痛み」も不安要素ですよね。

卵子凍結を行う際は、凍結する卵子を採るために排卵誘発剤の注射が必要になります。
その際の痛みはチクッとする程度。採卵の痛みは、当日のみ〜2、3日続くこともありますが、鎮痛剤で軽快する程度です。

生まれてくる子どもへの影響は無い?

凍結卵子を用いる場合は顕微授精をする必要があります。不妊治療で行われる顕微授精について、海外では、遺伝子発現の異常がわずかにふえるかもしれない、という報告もあります。

現在わかっているところでは、凍結卵子で生まれてくる子どもに異常が出る確率は、自然妊娠の場合と差はありません。

凍結した卵子を使った妊娠までの流れは?

凍結した卵子を使った妊娠までの流れは?

凍結卵子を解凍し、顕微鏡を使って卵子に精子を注入する「顕微授精」で受精させ、数日後そだった胚を子宮に戻します。または、胚を再凍結する場合もあります。

凍結時期によって体の中に戻す卵子の状態は異なります。凍結をするときに「いつ妊娠への準備をするか」も考えておくと良いでしょう。

妊娠を保証するものではないですが、凍結時期により妊娠のしやすさ、は異なります。また、出産の時期により、出産のリスクもかわるので、凍結するときに「いつ妊娠への準備をするか」もかんがえておくと良いでしょう。

まずはご自身の人生プランを考えてみて

最近耳にすることが増えた「卵子凍結」。将来子どもが欲しいのであれば、卵子凍結も出産の選択肢として考えてみると良いと思います。実際に行うことを考えていろいろな不安や疑問が出てきたら、クリニックへの相談も検討してみましょう。
まずは選択肢の一つとして考えられるよう、ぜひ参考にしてみてください。

監修者
◆船曳 美也子(ふなびき みやこ)
産婦人科専門医・生殖医療専門医

神戸大学文学部心理学科、兵庫医科大学卒業。兵庫医科大学、西宮中央市民病院、パルモア病院を経て医療法人オーク会へ。エジンバラ大学で未成熟卵の培養法などを学んだ技術と自らの不妊体験を生かし、診療にあたる。また、早くから不妊と肥満の関係性に着目し、2ヶ月で14kg の減量に成功した患者様の排卵障害が改善したことから、ダイエット・プログラ ムを発案。国内外の学会発表多数あり。
医療法人オーク会

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