一人だったはず
とあるビルのエレベーターに乗ったときのこと。
“バチン”
突然、電気が消え、エレベーターの動きが止まりました。
どうやら停電したようなのですが、すぐに停電灯がつき、薄暗い空間が広がります。
私は少し動揺したものの冷静に非常ボタンを押し、じっと人が来るのを待つことに。
「はぁ、とんだ災難だ……」
溜め息を漏らしてスマホの画面を見ると、圏外の表示。
暇を潰せる道具も絶たれ、突然訪れた不運に思わず天を仰ぎました。すると……
「っ……!」
頭上に小さな鏡がついていることに気が付いたのです。
そしてふと上を見上げたタイミングで、私の後ろに、女性の姿が見えました。
再確認
このエレベーターには、私しか乗っていなかったはず。
驚いてすぐに鏡から視線を逸らします。
心臓は早鐘を打ち、頭は真っ白に。
しかし、見間違いだったかもしれません。
もう一度、恐る恐ると鏡を確認すると……
「ひっ、ひいっ……!」
そこにはやはり、女性の姿が。
そして先ほど見上げたときと違っていたのは、女性は私に覆い被さるようにして、後ろから両腕を回していたのです。
駆け付けた管理人
あまりの恐怖に、私はその場にしゃがみ込み、膝を抱え込みました。
「早く誰か来てくれ!」そう心の中で祈りながら、ひたすらにその場で丸くなっていたのです。すると……
“パッ”
電気が復旧し、エレベーターが動き始めました。
「大丈夫ですか!?」
そうして開いたドアから、ビルの管理人と見られる男性が心配そうに声をかけてくれました。うずくまっていた私を見て、驚いたのでしょう。
男性が差し伸べてくれた手に、私は安堵から涙が滲みそうになりました。
そうして「ありがとうございます」とお礼を伝えながら、その手を取ろうとすると……
「お二人とも、もしかして気分が悪いでしょうか?申し訳ありませんでした!まずは、そちらの女性から!」
男性は、私の後ろに手を伸ばしました。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆松木あや
ホラーやオカルトが好き。在住する東北の地で、ひんやりとした怖い話を収集しています。
恐怖体験の「おすそわけ」を楽しんでもらえると嬉しいです。
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