ゴロン
これは、親戚のお墓参りに訪れたときの話。
その墓地にはしばらく足を運んでいませんでした。
用事があって近くまで来ていた私は、ついでに親戚のお墓を拝んでいくことにしたのです。
誰もいない墓地で手を合わせ、心の中で先祖への挨拶を。
一通りを済ませ、さてそろそろ帰るかと腰を上げたときでした。
「っ!?ひっ、ひいいぃっ!?」
視線の向こうにある、少し小高い墓の並びから“ゴロン”と地面に転げ落ちる、生首が見えました。
見えるべきではないもの
しかし、普通に考えてそんなことがあるわけがありません。
遠目からですが、転げ落ちたはずの生首はどこにも見当たらないのです。
つまり、見えてはいけないものが見えてしまったのでしょう。
一気に血の気が引いた私は、乗ってきた車まで走ります。
「こんなところに居てはいけない」と、急いで墓地を後にしようとしますが……
“ゴロン”
今度は脇道から道路に、先ほどの生首が転がってきました。
ある時から
「ぎゃああああっ!!」
慌ててブレーキを踏む私。
しかし、やはり生首はどこにも見当たらないのです。
その後、その墓地の一角を離れるまで、転がる生首を何度も目撃することになりました。
のちに親戚にこの話をすると、親戚もある時から突然、転がる生首を遠目に目撃するようになったのだといいます。
それまで何年、何十年とあのお墓に訪れていてそんなことは一度もなかったのに……。
親戚のいう“ある時”を境に、あの墓地にとんでもない遺体が眠ったのではないかと、私には思えてなりません。
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆松木あや
ホラーやオカルトが好き。在住する東北の地で、ひんやりとした怖い話を収集しています。
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