【ゾッとする怖い話】「私が毎日手を振っていたあの子は誰?」新居での恐怖体験

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引っ越してきたあの家でもらった、はじめての自分の部屋。
部屋の出窓から見える隣の家。
毎日笑って手を振ってくれる“彼”がいることに、私は少しも疑問をもたなかった――。

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新しい部屋と、隣の窓

二階の窓出典:stock.adobe.com

隣町から引っ越してきた家は、少し古びていたけれど、静かな住宅街の一角にあった。

2階の角部屋が、私の部屋になった。
中学生になる節目に「やっと自分の部屋ができた」と、胸が躍ったのをよく覚えている。

出窓の向こうには、隣の家の2階が見える。
ある部屋が見える、この眺めが私は好きだった。

隣の家のその部屋には、小さな男の子がいる。
小学校低学年くらいだろうか。

いつもニコニコしていて、こちらがカーテンを開けると、嬉しそうに手を振ってくれる。

最初は驚いたが、すぐに慣れて、私も笑顔で手を振り返すようになった。
親に話しても「隣に子どもがいるなら安心ね」と笑われただけだった。

窓の奥から、家族の気配を感じたことはなかった。
「昼間はみんな学校や仕事なのかな」と、子どもながらに思っていた。

ずっと同じ場所で笑っている

夏休みに入って間もなく、私はあることに気づいた。
昼でも夜でも、その子は同じ場所に立っていた。

笑顔のまま、動かず。
いつもと同じ表情で、ただ手を振り続ける。

おかしいと思いながらも、なぜか目を逸らせなかった。

夜中、ふと目が覚めてカーテンを開けると、真っ暗な部屋の奥で、
その子の顔だけが、不自然に明るく浮かび上がって見えた。

数日後、私の部屋に遊びに来た近所の友達が、ぽつりと言った。
「ねえ、隣の家って……誰も住んでないんじゃなかったっけ?」
「え?」
「だって、空き家のはずだよ。たしか、数年前に火事があったって」

言葉が出なかった。
私が毎日、手を振っていた“あの子”は?

急いで母に確かめると、一瞬沈黙したあと、母はゆっくりと言った。

「あの家……昔、火事があったらしいの。
亡くなった男の子がいて……最後は、窓から助けを呼んでいたんだって」

出窓の向こうで繰り返される

ほの暗い部屋、カーテン出典:stock.adobe.com

私は恐る恐る、出窓のカーテンを開けた。
相変わらず、いつもと同じ場所に、いつもと同じ表情で、男の子がいた。

にこやかに笑って、手を振っていた。
その笑顔は、なぜか急に怖く見えた。

目だけが、まったく笑っていない。
どこにも“生きている”気配がなかった。

私は手を振るのをやめた。
それ以来、カーテンを開けられない。

毎晩、ガラスをコツコツと叩く音がする。
風の音だと思うようにしているけれど、本当はわかっている。
あの窓の向こうで、彼は今も待っている。

あの夜、誰にも気づかれずに命を落とした少年。
手を振り返してくれる“誰か”を、探し続けている。
今もずっと……。

※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

斎 透(さい とおる)

◆斎 透(さい とおる)

noteにて短編小説を執筆中の、犬と暮らすアラサー女子です。
やるせない夜にそっと寄り添うような文章をお届けしています。
幼い頃から、オカルト好きな母と叔母の影響で、不思議な話に夢中に。
「誰でも一つは、背中がひんやりする話を持っている」をモットーに、
ゾッとするけど、どこか温度のある物語を綴っています。
美容やキラキラした話題に疲れた夜、よければ一編、覗いてみてくださいね。
●note:https://note.com/sai_to_ru

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斎 透(さい とおる)

noteにて短編小説を執筆中の、犬と暮らすアラサー女子です。
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幼い頃から、オカルト好きな母と叔母の影響で、不思議な話に夢中に。
「誰でも一つは、背中がひんやりする話を持っている」をモットーに、
ゾッとするけど、どこか温度のある物語を綴っています。
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●note:https://note.com/sai_to_ru