【ゾッとする怖い話】「今日は、ちゃんとかかってましたよ」違和感のある隣人の一言

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一人暮らしを始めてから、玄関の鍵をかけたかどうかが不安で、何度も確認せずにはいられなくなった私。
ある日、帰宅した私に隣人がかけた一言で、その不安は別のものに変わります。

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味醂
2026.05.16

確認癖

古いマンションの通路出典:www.google.com

一人暮らしを始めてから、戸締まりの確認を何度もしてしまうようになった。

玄関の鍵を閉めたあとも、駅まで歩きながら「ちゃんと閉めたっけ」と不安になる。
ひどい時は電車を待っているホームから引き返して、部屋の前まで確認しに戻ったこともあった。

自分でも面倒だと思う。
でも、そうしないと落ち着かないのだ。

そんな私が、一度だけ本当に鍵をかけ忘れたことがある。

その日は寝坊してしまって、会社にもぎりぎりで飛び出した。
帰りの電車で嫌な予感が止まらず、息を切らしてほとんど駆け足で家までの道を急いだ。

部屋に戻ると、やっぱり玄関の鍵が開いていた。

何も盗られてはいなかったし、部屋の中も荒らされていない。
ほっとしかけたところで、何か変だと気づいた。玄関に脱ぎっぱなしだったはずのサンダルが、きれいに壁際へ寄せてあったのだ。

無意識に自分で揃えたのかもしれない。
そう思うことにしたが、それ以来、確認癖はまたひどくなった。

帰り道の不安

その日も、電車に乗ったあたりからまた不安に襲われた。

朝、鍵をかけた。たしかにかけたはず。でも、鍵を回した感触の記憶が曖昧だ。
途中で引き返そうか迷ったけれど、時間がなくてそのまま出勤してしまった。

二階の通路に上がると、ちょうど隣の部屋の人が出てきた。

引っ越してきた時に一度挨拶しただけの、四十代くらいの女性だ。
会えば軽く挨拶する程度で、とくに親しいわけでもない。いつもきれいに髪をまとめていて、静かな人という印象だった。

「こんばんは」

隣人は少し笑って頷いた。

「今日は、ちゃんとかかってましたよ」

何のことかわからなくて、私は立ち止まった。

「え?」

狼狽える私を尻目に、隣人は「じゃあ」とだけ言って自分の部屋へ入っていった。

私は鍵を握ったまま、しばらくその場から動けなかった。
震える手で鍵穴に鍵を差し込むと、たしかな手応えがあって“カチリ”と錠が回った。

消えない違和感

アパートの玄関出典:stock.adobe.com

鍵はちゃんとかかっていた。
なのに、部屋に入ってチェーンをかけてもまだ心臓が早鐘を打つ。

今日は、ちゃんとかかっていた。

じゃあ、ちゃんとかかっていない日も知っていたんだろうか。

あの日開けっぱなしの玄関を覗いたのも、あの人だったのかもしれない。サンダルを壁際へ寄せたのも。
あるいは、今日だって私のドアノブを確かめたから、あんなことが言えたのかもしれない。

結局その夜は、何度鍵を確認しても眠れなかった。

※この物語はフィクションです。
※この記事に使用している画像はイメージです。

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子どもの頃から怖い話が好きで、ホラー小説やネット怪談など、文章作品を中心に親しんできました。映像作品の痛そうな表現や急に驚かせる演出は少し苦手ですが、想像がふくらむ怖さや、日常の違和感が少しずつ不穏さを増していくような話に惹かれます。読んだあとふとした瞬間に思い出してしまうような“あとから効いてくる怖さ”を大切にしています。

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