【ゾッとする怖い話】「あの人は、いいから」車掌が酔っぱらいを起こさない理由

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満員電車が苦手で、帰りはいつも空いている各駅停車に乗っています。
向かいの席で眠っているおじさんが終点に着いても起きないので、車掌さんに起こしてあげるよう頼んだのですが……。

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味醂
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2026.05.28

各駅停車

夜の電車/車内出典:stock.adobe.com

俺ね、満員電車っていうか、人同士の距離が近いのがほんとに苦手で。電車はできるだけ各停で移動したいんですよ。
最寄りが神奈川の端っこのターミナル駅なんで、各停にのんびり乗ってれば帰れるし。

その日も仕事終わって、のんびり座って帰ってました。

夜の帰宅ラッシュを過ぎた後の下りって、最初はそこそこ人がいても、大体20分くらい乗ってると結構がらんとしてくるんですよね。

その日は、俺の他に10人くらいかな?
塾帰りの学生とか、俺みたいな会社帰りの人とかがぱらぱら乗ってたと思います。

向かいのロングシートに、見るからに酔っぱらったおじさんが座ってました。
ネクタイをだらしなく緩めて、足を投げ出すみたいにして、口を開けて寝ています。

電車が空いてることもあり、周りの人に迷惑がられることもなく、逆に熟睡してました。
こんなに深く寝てて大丈夫かなって、こっちが少し心配になるくらい。

終点

なんとなく気にしつつ電車に揺られてたら、そのおじさんは終点までそのまま起きなくて。
「この電車は当駅止まりです。乗り換えは2番ホームです」ってアナウンスが流れても起きる様子がないんです。

車掌さんが来たんで、ちょっと迷ったんだけど、そのおじさんを指さして言ったんです。

「あの人、起こしてあげてください」

車掌さんが、ああ酔っ払いねみたいな感じで頷いて、おじさんの前に行くじゃないですか。
それで俺は当然、肩でも叩いて起こすんだと思って見てたんです。

でも車掌さんはなんでか、そのままおじさんに何も声をかけず、次の車両へ行こうとするんですよ。

えっ、と思ってたら、すれ違いざまに小さな声で「あの人はいいから」って意味わからんこと言ってきて。

しかも、早く降りてみたいな手振りまでされて、それで俺、慌ててホームに降りました。
電車を降りて案内表示を見たら、やっぱりその電車回送で、さすがにおじさんを乗せたままにしていいはずないんですよ。

黒い水

駅のホーム出典:stock.adobe.com

窓越しに見えるおじさんは、さっきと同じ姿勢で、ぐったり力が抜けたように座っています。
寝ている、というより、座席に置かれているみたいでした。

ちょっと背伸びして窓から覗いたら、おじさんの足元が見えます。

黒い水みたいなものが、座席の下からじわっと広がっていました。

靴が汚れてるとか、缶コーヒーをこぼしたとか、そういう感じじゃありません。
もっと粘り気のある液体で、おじさんの足元の床だけが黒く染まっているんです。

思わず後ずさった瞬間、ドアが閉まって、電車はゆっくり動き出しました。

ホームに残った俺は、ただその車両を見送ることしかできませんでした。

それ以来、電車で眠りこけている人を見ると、どうしてもその人の足元を見てしまうんです。

※この物語はフィクションです。
※この記事に使用している画像はイメージです。

味醂

◆味醂

子どもの頃から怖い話が好きで、ホラー小説やネット怪談など、文章作品を中心に親しんできました。
映像作品の痛そうな表現や急に驚かせる演出は少し苦手ですが、想像がふくらむ怖さや、日常の違和感が少しずつ不穏さを増していくような話に惹かれます。
読んだあとふとした瞬間に思い出してしまうような“あとから効いてくる怖さ”を大切にしています。

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