いわくつきの部屋
夏休みの間、親戚が経営する民宿を手伝うことになりました。
数日間の泊まり込みでしたが食事付きで日当もかなり良く、大学生の私にはありがたい話です。
民宿に着くと、親戚から申し訳なさそうに声をかけられました。
「急な予約が入って満室になってね。普段は使ってない部屋なら空いてるんだけど……」
案内されたのは、建物の奥にある古い和室。
「ただ……この部屋、昔ちょっとあってね。出るって話があるから、電気は消さないで欲しいんだ」
どうやら以前、この部屋で宿泊客が亡くなったことがあるそうです。
「嫌なら近くのホテルを取るけど……」
しかし私は気にせず、その部屋を使うことにしました。
というのも私自身、今住んでいるアパートがいわゆる事故物件なのです。
家賃の安さにつられて入居したものの、これまで幽霊なんて見たことがないので問題ない。
あの時の私は、そんなことを思っていました。
奇妙な夜
その日の夜。 言われた通り電気をつけたまま布団に入り、いつの間にか眠っていました。
夜中、ふと目が覚めます。
部屋は明るいまま。 時計を見ると午前2時を過ぎていました。
寝直そうとして、妙なことに気付きました。
部屋の隅だけが、異様に暗いのです。
照明は確かについています。
それなのに、部屋の角だけ真っ暗で、壁の色すら見えません。
寝ぼけているのかと思って眺めているうちに、その暗闇が少しずつ広がっていることに気付きました。
畳を這うように、ゆっくりとこちらへ近づいてきます。
怖くなって布団をかぶろうとした、そのとき。
暗闇の中から、小さな声が聞こえました。
「電気、消してくれないんだね」
私は逃げるように布団を被って目を閉じましたが、恐ろしくてそのまま朝まで眠ることはできませんでした。
翌朝、親戚に夜のことを話すと、みるみる顔色が変わります。
「そんなはずない。今までは電気をつけていれば何もなかったんだよ」
つまり、今まで通用していたはずの対策が昨夜初めて通用しなかったということです。
そう考えると、さらに背筋が寒くなりました。
いつものようにベッドに入って……
結局、その日から別の部屋で寝かせてもらい、残りの手伝いを終えるとすぐに自宅へ帰ることに。
数日もすると、あの夜のことも少しずつ現実味を失っていきます。
「疲れていたから変な夢でも見たのだろう」なんて考えることにしました。
その晩も、いつものようにベッドへ入りました。
私の部屋は事故物件ですが、これまで一度だっておかしなことは起きていません。
いつものように電気を消して、目を閉じました。
しばらくして……。
部屋の隅から、聞き覚えのある声がします。
「ここなら電気消すんだね」
※この物語はフィクションです。
※記事に使用している画像はイメージです。

◆さしすせそそぎ
怪談や都市伝説、モキュメンタリー作品が好きで日頃からさまざまなホラーコンテンツに触れています。不気味な余韻が残る物語や「読まなければよかった」と思いながらも続きが気になってしまうような怖い話をお届けできればと思っています。
特に、人の悪意や心理が生み出す恐怖を描いた作品や読み終えたあとにもう一度振り返りたくなるような意味が分かると怖い話、ひんやりとした読後感が印象に残る物語が好きです。
※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

