通学路の七不思議
学校の怪談とか、七不思議とか、ありましたよね。
ああいうのって、ふつう学校の校舎で怖い目にあう話だと思うんですけど、私の通ってた小学校にはちょっと毛色の違うのがあったんですよ。
通学路の途中に短いトンネルがあって、そこ、昼間でも少し薄暗いから不気味だったんです。
生徒みんなが通る道でもないのに、なぜかそこが七不思議認定されていました。
「もしあのトンネルの中で名前を呼ばれても、絶対に返事しちゃだめ」
何か逸話があるわけでもないんですけど、まあ七不思議とかってそういうもんですよね。
私はけっこう、そういうの信じちゃうというか気にするタイプの子でした。
2つ上の姉は真逆で、そういうのをまったく信じないっていうか、小馬鹿にしてくるタイプの人なんですよ。
歳も近いし、基本的には仲良かったんですけど、そこだけは相いれなかったです。
好きじゃないですか、小学生ってそういう、占いとか怖い話とか。
なのに、そういう話するとすぐ「まだそんなの信じてんの?」とか言ってくるんですよ。
馬鹿にしてくるだけじゃなくて、面白がっておどかしてきたりするんで本当ムカついて。その度ケンカです。
トンネルの声
私が小学5年生、姉が中学1年生の時でした。
その日は委員会で、いつも一緒に帰ってる友だちと時間が合わなくて、1人で下校していたんです。
家の手前に例の七不思議のトンネルがあって、ちょっと緊張しながら薄暗い道に足を踏み入れました。
早歩きで進んでいたら、後ろから呼び止められたんです。
姉の声でした。
「ねーえ、なんでちょっと走ってんの?もしかしてまだトンネル怖いの?」
いつものようにからかう声。むっとして、思わず言い返したんです。
「もう!うるさいよお姉ちゃん!」
振り返っても、だれもいませんでした。
そもそも、いくら委員会で遅くなったとはいえ部活のある姉とは帰る時間が違うはずなんです。
急に怖くなって、そのまま走って帰りました。
(このトンネルなにかおかしい……)
家に着いたら、慌てた様子の母が出てくるところでした。
「どうしたの?」
「お姉ちゃん、学校でケガしたんだって」
「えっ?」
「お母さん、そのまま病院付き添うから、あれだったら晩ごはん食べちゃってて」
呼んだのは誰?
帰ってきた姉は、手首を骨折していました。
部活が終わって、その日は姉が片付け当番だったので、みんなより少し遅れて一人で校舎の階段を降りていた時だったそうです。
だれもいなかったはずなのに、後ろから背中を押されたと言うんです。
「ごめん、そんな訳ないってわかってるんだけど……」
姉は言いづらそうに続けました。
「あの時、あんたの声が聞こえた気がするんだよね。『お姉ちゃん』って」
迷いましたが、私も例のトンネルで姉に声をかけられて、返事してしまった話をしました。
2人して青ざめて、近所の神社にお参りしたのを覚えています。
それが効いたのかはわかりません。
でも、あれ以来、姉はあの手の話をあまり笑わなくなりました。
※この物語はフィクションです。
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◆味醂
子どもの頃から怖い話が好きで、ホラー小説やネット怪談など、文章作品を中心に親しんできました。
映像作品の痛そうな表現や急に驚かせる演出は少し苦手ですが、想像がふくらむ怖さや、日常の違和感が少しずつ不穏さを増していくような話に惹かれます。
読んだあとふとした瞬間に思い出してしまうような“あとから効いてくる怖さ”を大切にしています。
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