卵子凍結

卵子凍結にかかる費用や凍結までのスケジュールは?【専門医が解説】

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東京都が昨年から助成を開始し注目が集まっている「卵子凍結」。今回は、「卵子凍結はいくらかかるの?」「卵子凍結はどのくらいの期間保存できるの?」など、凍結にかかる費用や期間、平均の凍結個数などを、卵子凍結に長年携わっている専門医が解説します。

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監修者
船曳美也子
  • 産婦人科専門医・生殖医療専門医
  • 船曳美也子

神戸大学文学部心理学科、兵庫医科大学卒業。兵庫医科大学、西宮中央市民病院、
パルモア病院を経て医療法人オーク会へ。エジンバラ大学で未成熟卵の培養法などを学んだ技術と自らの不妊体験を生かし、診療にあたる。また、早くから不妊と肥満の関係性に着目し、2ヶ月で14kg の減量に成功した患者様の排卵障害が改善したことから、ダイエット・プログラムを発案。国内外の学会発表多数あり。

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卵子凍結のステップ

卵子を採取する

実際に卵子凍結を行う際には、大きく分けて3つのステップがあります。

1つ目は排卵誘発

効率よく卵子を採取するために、内服薬や注射などを使用し、複数の卵子を育てるステップです。
排卵誘発を全く行わず、自然に卵が育つのを待つ方法もありますが、1回(周期)に1個の卵しか採卵することができません。

年齢により妊娠確率は異なるため、妊娠確率9割を見込むのに必要な凍結した卵子は、30歳では20個、36歳では30個といわれています

そのため、凍結する卵子の数は多い方がよく、採卵する卵子の数もなるべく多くなるように排卵誘発剤の使用をおすすめしています。

一般的には、1度に10個の卵子を採卵することを目標に、内服薬や注射をする「刺激法」を採用することが多いです。

2つ目は採卵

卵巣に針を刺して、卵子を採取するステップです。

 「日帰り」でできる簡単な手術のイメージで、当日決まった時間にクリニックに来院、施術室にて施術を行い、少し体を休めていただいたら帰宅できます。

3つ目は凍結保存

採卵した卵を凍結保存をするステップです。
クリニックで卵を扱う専門職である培養士が行います。

後日、卵子がいくつ凍結できたのかについて報告がありますが、患者が負担する作業はありません。

卵子凍結の費用はどれぐらいかかるの?

卵子凍結

卵子凍結は保険適用ではないため、自費で行われます。

東京都福祉局が2023年に行った調査によると、卵子凍結までに最低でも30〜40万円かかると答えたクリニックが多いという結果でした。

あくまでも平均金額となっており、排卵誘発の方法や、採卵した卵の数によって費用は異なります。

どれぐらいの期間、保存しているの?

凍結タンク

凍結保存をする費用は、多くのクリニックが1年単位で提示しています。

例えば、オーク会で1度に卵子を10個採卵した場合は、

【卵子10個を凍結する場合にかかる費用(参考)】

  • 排卵誘発〜卵子凍結まで:約¥36万(税抜)
  • 1年間の凍結保存費用:約¥9万(税抜)
  • 2年間の凍結保存費用:約¥16.5万(税抜)

※医療法人オーク会で10個の卵子を凍結した場合の参考費用です。
※凍結する卵子の数については医師と相談して決めましょう。
※平均の採卵数が10個前後のため上記では10個を例にしていますが、採卵できる数は人によって異なります。

「いつまで卵子を保存すればいいのだろうか……」と悩む方も多いと思いますが、監修医の船曳先生がいる医療法人オーク会では今まで凍結した卵子を融解して不妊治療を行った方の平均保存期間は2〜3年でした。

東京都福祉局が昨年発表した調査結果でも、一番多いのが1年未満、次いで僅差で2〜3年が多くなっています。

実際に卵子凍結をする人はどんな人?

卵子凍結

卵子凍結を行う方には、さまざまな理由があるもの。
また、年齢だけでなく、卵子の残数によっても凍結までのスケジュールは変わります。

例えば、以前クリニックで卵子凍結を行ったAさん(35歳)は、卵子の残数を調べるAMH検査※で45歳と結果が出たため、卵子凍結を決意。
※AMH検査は、卵巣の中に卵子がどのくらい残っているかを調べるための検査で卵巣の年齢を測る検査とも言われています。

1回目の採卵数は3個と少なく、合計4回の採卵で20個の卵子を凍結することに成功します。
5年後にパートナーと再受診し、凍結した卵子を9個融解して受精作業を行い、受精卵が3つできました。
そのうち、最初に子宮に戻した1つの受精卵にて妊娠。

Aさんは卵子凍結をしてから5年後に凍結した卵子を使用して妊娠しましたが、卵子凍結をしていても、凍結した卵子を使用せずに自然妊娠する方もいらっしゃいます。

まずは、ご自身の身体の状態を知るためにAMH検査を行い、卵子凍結を行うと決めたらご自身の日々の環境に寄り添ってくれるクリニックを選んでくださいね。
例えば、通いやすい場所にあるか、オンライン診療や説明会など遠隔での治療が行えるかなど……。

AMH検査や排卵誘発は近場のクリニックで実施し、卵子凍結や保存は別のクリニックで対応してもらう方法もあります。

ご自身の年齢や体の状態、仕事などを含めた人生プランを基に、卵子凍結という選択肢を考えてみてください。

自治体の助成金を利用して、費用を抑える検討も

相談する夫婦出典:www.shutterstock.com

近年、注目を集める卵子凍結ですが、その費用は決して安いものではありません。ですが、現在パートナーのいない方、パートナーが妊娠・出産に協力的ではない方、AMH検査の結果が良くない方など、それぞれ事情を抱える女性が、将来の妊娠・出産のためにできる唯一の予防医療です
2023年から東京都による卵子凍結の助成が始まりました。また、後助成を検討している自治体もあるようです。ぜひ、卵子凍結を行われる際の参考にしてみてください。

監修者
◆船曳 美也子(ふなびき みやこ)
産婦人科専門医・生殖医療専門医

神戸大学文学部心理学科、兵庫医科大学卒業。兵庫医科大学、西宮中央市民病院、パルモア病院を経て医療法人オーク会へ。エジンバラ大学で未成熟卵の培養法などを学んだ技術と自らの不妊体験を生かし、診療にあたる。また、早くから不妊と肥満の関係性に着目し、2ヶ月で14kg の減量に成功した患者様の排卵障害が改善したことから、ダイエット・プログラ ムを発案。国内外の学会発表多数あり。
医療法人オーク会

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